この人に聞きたい:第142回
(週刊冷食タイムス:08/05/20号)
外部の知恵借り生産性向上
日本水産(株)常務取締役 食品事業統轄 細見 典男 氏
(ほそみ・のりお)昭和48年入社。生産畑を歩み、工場長などを経て取締役食品事業副統轄から平成19年常務・統轄。北大水産卒、25年京都丹後生まれ、58歳。
水産と連動した一貫事業で強み出す
天洋食品事件と海外事業の不振に加え、すり身をはじめとする原料高が重なり、足踏みを余儀なくされたが、重点化した商品や課題とした業務用の活性化は果たした。得意の生産性向上で閉塞感打破を今期進める。
――前期、苦戦を強いられた。
細見 ミートホープでも2度の中国問題でも直接の原因当事者ではなかったが、さすがに市場低迷の影響は大きかった。特に市販用は2〜3月が二割減、4月も15〜10%減が続いた。しかし業務用はこの間、3〜6%増と実に堅調で売上げを底支えしてくれました。
――海外生産比率が高い。
細見 食品の海外比率が30%、このうち中国が20%だから市場の中国産拒否の影響は大きい。我々は中国を一切否定していない。安心安全品質を確保し、それを正しく消費者、市場に伝える努力を企業も業界も打ち出すべきです。
――攻める戦略も必要だ。
細見 その点ではニッスイの冷凍食品の“顔”となる、「これならニッスイだね」と言われる絶対強い商品を是非作り上げたい。100億円商材を是非創出したい。
――建設中のハチカン新工場、60億円といういまどき数少ない巨額を投じる。相当期待が大きい。
細見 業務用の重点工場とします。地の利(八戸)を生かした水産加工品のほかに、クリームソース系、フィレ加工品などを手掛ける予定。資本参加したマルサ笹谷商店(北海道)の国産原料供給力というリンクスも生かせる。
――業務用は重点品が好調だ。
細見 水産フライ・から揚げ、クリームコロッケ、鶏加工品、中華商材、水産練り製品、枝豆等の農産品の6カテゴリーだが、さらに磨きをかけて提案します。
――原料高騰が懸念される。
細見 えらい勢いで上がっており、大変心配してます。特にすり身は五割高で今期は30億円の収益圧迫を見込んでいます。包材その他で10数億円、合わせて今期は40数億円のコストアップが避けられないでしょう。異常ですよ。
――値上げかコスト減になる。
細見 製品値上げは不可避だが単純値上げが通るとは思えない。規格変更など細かく対処しながら市場のご理解を得るしかない。しかし当社は水産事業とリンクし、原料からの一貫事業を推進してきました。その強みを発揮できる時代だと、実はひそかに思ってます。
――生産性向上活動も活きる。
細見 04〜08年の5年間で人時生産性を倍にする「2in5」活動を推進し、一人毎時49.86キロの生産をめざしているが、前期は04年度比で32%増、つまり52%の計画に対し1年遅れ。そこで外部専門家を招いて「金をかけずに工場改善」を進めており、遅れを取り戻します。収益改善のために生産性改善は不可欠です。
――魚肉ソーセージが好評だ。
細見 冷食は苦労したが「エコクリップ」は絶好調。ソーセージ全体で30%増、久々100億円を超え、400%、500%という営業成績の社員がゴロゴロ、士気が相当盛り上がった。もっと伸ばします。