この人に聞きたい:第151回
(週刊冷食タイムス:08/07/22号)
質が伴う拡大路線へ
鞄本アクセス 代表取締役社長 吉野芳夫氏
(よしの・よしお)昭和40年安宅産業、52年伊藤忠商事入社。平成14年同社顧問を経て叶瘉アクセス、15年6月代表取締役社長。埼玉県出身、65歳。東大卒。
生鮮の取り組みを新機軸に
日本アクセスは3カ年計画で総事業規模3兆円、売上高1兆5000億円、経常利益率1%以上をめざしている。さらなる規模拡大にも意欲を見せる吉野芳夫社長にそのねらい、また生鮮分野への挑戦についても聞いた。
――量よりも質とあらゆる場面で言われている。
吉野 ブランドやモノを持たない卸は、縮小均衡では将来の夢が描けません。山椒は小さくてもピリッと辛いということで、規模は小さくても収益性の高い会社にするのが良い企業という意見も理解できます。しかし卸という業態でそれはどうでしょう。
――小を含めて様々な卸がひしめきあっている。
吉野 そう。言ってみれば同質化の競争を避けて通れません。やはり我々は質をともなった拡大路線です。ダボハゼのごとく拡大策を図るのではなく、外に対する攻めと内部改革が伴わなければいけません。コストダウンによる収益力の強化は2010年度を最終年度とする第3次中計の根幹です。
――質が問われる中、生鮮食品への取り組みを新しい機軸に打ち出している。
吉野 得意先が一番関心をもっているのが生鮮分野。従来は卸イコール加工食品卸。ですが、食品卸を標榜している以上、生鮮食品は避けて通れないと思います。卸売市場そのものが大変な制度疲労をおこしている印象があります。国産物の活性化にもつながっていません。我々は市場外流通の立場で産地と得意先をつなぐことを考えています。
――生鮮には相場、市況がある。リスクをとっていけるのか。
吉野 そこに切り込んでいくことで、得意先から評価をいただけることにつながるはずです。むしろ市場流通がいま大変な状況にあるのではないでしょうか。市場法にあぐらをかいているような感じすらします。この市場法も改革に向けて検討されています。生鮮分野の成長は現状の市場流通では難しいのではないでしょうか。量販店が農場経営に乗り出す動きなどはその反映でしょう。
――食品卸が生鮮食品の取り扱いを標榜しても具体的に実るところまでなかなかいかない。
吉野 多少時間はかかると思いますが、生鮮品の扱いが避けて通れない以上、具体的に検討しなければいけません。鮮魚についてはいろいろな漁港と相談しています。水揚げした魚をすぐに開き、その状態でお客様のところに届ける仕組みを作り提案しているところです。引き合いが非常に強い。また野菜も仕組みを構築しつつあります。量販店が苦手とする部分に新しい提案をしなければ卸は認めていただけません。
――将来へ期待がもてそうだ。
吉野 簡単ではないでしょうが言い続けることで仕組みもできあがってくるものです。当社が持つ265カ所の流通基盤を上手につなげば、全国各地の得意先に様々な提案ができるでしょうし、やらなければいけないと考えています。言い続けることが必要なことだと思います。