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この人に聞きたい:第175回
(週刊冷食タイムス:09/01/20号)

08年の総括
天洋事件に翻弄
コミュニケーション不足学ぶ

味の素冷凍食品(株)社長  進藤大二氏

 

局面打開に全社まとまる
期末で前年並確保、営業利益は上乗せへ

 昨年は1月早々からいろんな問題が相次いだが、とりわけ天洋食品事件が後々まで尾を引いた。これにより、本来は将来に向けて一手二手を打つべき重要な時期だったにもかかわらず、相次ぐ問題に対処を迫られ、防戦一方の一年に終わってしまった。
 海外も含めて様々な問題は起きたが、その大半は日本で発生したことであるにもかかわらず、ルーツとして中国問題にすりかえられた報道によって一進一退を繰り返し、特に冷凍食品に対する風当たりが強かった。
 当社の売上げも4〜12月の市販用は、ギョーザの影響と中国産問題により前年比8%減を強いられた。業務用が3%増と踏ん張って、合わせて4%減となった。
 昨年2〜3月の落ち込みを考えればよく踏み止ったとも言えようが、できれば前年並にいま少し近づけたかった。
 市販用「ギョーザ」は1〜12月の12カ月で20%減。特に2〜3月が大きく落ち込み、4〜6月も苦戦した。しかし4〜12月の第3四半期累計では15%減とやや持ち直している。

顧客接点を反省
 大変厳しい1年ではあったが、必ずしも悪いことばかりではなく、重要な問題も浮き彫りになった。
 これまで安全安心の取り組みはプロセス管理を重点としてきたが、その考えに間違いはないと確認できた。一方で、取り組んだことをきちんと消費者、顧客に伝え切れたかというと、この点が最大の反省材料として課題に残る。内部で安心感を持ち、自己満足していただけではなかったか。
 そこで消費者とのコミュニケーションを促進するため、できることから早速取り組みを始めた。安心安全を担保する仕組みとして原料監査部も設置し、ハード面の強化を図った。3月以降は“新・安心品質”の仕組みで当社の姿勢を世に問うた。
 不幸にして天洋事件は起きたが、苦しい中で我々の考えを新聞広告で3月に1回、6月と11月に2回ずつ掲載し中国産商品の取り組み、指定農場の取り組みなどの点で消費者とコミュニケーションを図った。
 社内でも議論を重ねた。中国産(の原料扱い)をいま出すべきではないという異論もあった。しかし我々は一歩踏み出し、あえて中国産を打ち出すことに歩を進めた。
 さらに、冷凍食品協会の活動などを通じてマスコミへの働きかけも行ない、メディアや有識者の中国工場見学会実施にも協力し、品質担保力の向上を図った。
 この取り組みを通じ、コミュニケーションの大切さを改めて知らされた。

環境変化加わる
 味の素冷凍食品の固有の問題も発生した。
 大型の新工場を建設したタイのTAB(タイ味の素ベタグロ冷凍食品)で軌道に乗せようとした矢先にボヤを起こし、スケジュールが遅れた。
 香港アモイ社は予想を上回る営業外費用が発生し、減益を余儀なくされた。様々な環境の変化が今期の業績に大きくのしかかる展開だった。
 こうした困難を乗り越えるため、当社は社内が1つにまとまり、一丸で問題対処に当たった。その意味で企業としては強くなったと思う。
 防戦続きではあったが、今後3カ月の踏ん張りで前年実績100%の着地をなんとしてもクリアしたい。10%増収をめざしていたが、12月までの環境を見ると難しい。市販用で4%減、業務用4%増で前年並を確保したい。

新コスト構造に
 昨年は安心安全とともに原料高騰への対応に迫られた。原料高は06年下期から顕在化していたので、それを想定しながらコストダウンを進めてきたが、昨年は予想を上回る原料高の影響が表れ、通年では計画比30〜40億円のコスト高が予想されている。
 そこで従来からのコスト削減から脱却し、価格改定とコスト吸収で乗り切りを図っている。第4四半期で原料はやや高止まりし、市場から値下げ要求が強くなっているが、当社は新コスト構造の考えに矛盾しないように取り組んでいる。原料高の分を吸収し、最終的に増益を果たしたい。
 その一環として、国内で推進しているSKT(生産性向上)活動が香港、米国、中国など海外工場にも導入され、取り組みが始まった。

伸び顕著な米国
 グローバル対応にも意識的に取り組んできたが、特に中国連雲港の2工場、米国と、タイの3工場の活用を中心に、米国、欧州、中国のチャネル開拓にいくつか成果が見えてきた。
 中でも顕著なのは米国AFU(アメリカ味の素冷凍食品)。既にAFUはわずかとはいえ前期で黒字化を果たしているが、今期も4月から黒字を続けている。11月は単月で40%の増収。米国経済も大不況だが、ウォルマート、サムズなど大型販売店の需要が日系店や日本食市場の伸びを上回って拡大している。香港アモイ社の米国販売拠点とも連携が進化し好調だ。

世界的な活動に
 味の素冷凍食品グループは予算、生産管理などの全体会議に海外も含め参加する。国内9工場、海外8工場とグループ内法人12社の代表が集まり、日・英・中の同時通訳付会議となる。それが当たり前になってきた。
 世界原料会議もタイ、中国を中心に開き、情報の共有化を図っている。
 海外販売を本格化するため欧州には駐在員を1名配置した。その成果としてユーザー開拓が目に見えて増え、発注量が拡大している。
 海外は将来に向けた次の一手二手を打つことができた。

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