この人に聞きたい:第193回
(週刊水産タイムス:09/06/01号)
新実習船「やいづW世」竣工
焼津水産高等学校校長 松田清孝氏
「夢とロマン」の海洋教育
職業直結のキャリア修得
明日の水産担う人材育成
焼津水産高等学校の実習船「やいづW世」がこのほど完成し、6月1日、三保造船所から同校へと引き渡される。新焼津漁港へ入港した同船は一般公開され、竣工式と壮行会を23日に行った後、最初の航海に向け出港する。同校松田清孝校長に新実習船の果たす役割について聞いた。
――新実習船「やいづW世」がめでたく完成しました。
松田校長 焼津水産高校では水産業を支える後継者の育成をめざした教育を実践しています。このようなわが校にとって、最新機器を装備した「やいづW世」の完成は大変意義深いものです。生徒が最新の技術を身につけることが可能となり、即戦力となる後継者を育成できると、地元はもちろん全国から期待が高まっています。
――貴校の教育方針とは。
松田 わが校では、普通高校では経験することのできない、職業に直結した実践的キャリア教育を行っています。生徒達は自分たちの腕でカツオを釣り上げ、実際の漁業を体験します。また、生き物を多く扱うことも我が校の特徴の一つ。生命と関わりを持った授業により、生徒達の成長に繋げています。
――新実習船はどのような教育に使われるのでしょう。
松田 「やいづW世」では、カツオ一本釣漁業実習や、航海運用学・機関学・無線通信運用学などの実習、海洋観測・海洋生物調査研究、体験航海を行います。主に、海洋科学科の生徒と専攻科の学生が乗船して学びます。海洋科学科ではさらに航海、機関、開発の3コースに分かれ、専門的に学習を進めており、技術と知識を身につけることができます。
「やいづW世」は6月23日の竣工式後から初航海へ出ます。7月14日までの28日間、海洋科学科の3年生22名と専攻科の1年生13名の計35名が乗船し、まずは本州東沖へと向かう予定です。
――どのような特徴を持った船ですか。
松田 やはりカツオ一本釣り型の船であることがわが校実習船の大きな特徴でしょう。最新鋭の観測機器や航海実習機器も装備しています。最新の技術が身につけば、卒業後の様々な職場ですぐにそれを生かすことができます。即戦力として活躍できると各方面から注目されています。
――安全性についていかがですか。
松田 電子海図装置や衝突予防援助装置を装備して、安全性を強化しました。また、今回から生徒の居室を喫水線の上に配置しました。区画は8人部屋から4人部屋に変えて、広くなっています。女子専用のスペースもしっかり確保しました。これまでに比べ、生徒達が安全で快適に実習を積むことができるようになります。
――「やいづW世」は一般にも公開され、体験乗船を行うとか。
松田 「やいづW世」は実習船であるとともに、県の調査船の役割を持っています。そして、県民の生涯学習にも活用されます。10月に開催される「第24回国民文化祭・しずおか2009」では、静岡県の魅力を全国に発信するチャンスとして、様々なイベントが企画されています。焼津では、海の文化フェスティバル「みなとみなくる2009」を開催しますが、新焼津漁港に「やいづW世」を寄航し、体験乗船を行います。「やいづW世」を見て、乗って、船や海の魅力に目覚める子ども達が多く生まれると期待しています。その他、大阪市の帆船「あこがれ」や三谷水産高校の「新愛知丸」なども集まり、海と船の魅力を大いにアピールする予定になっています。
――新実習船の果たす役割は大きいですね。
松田 新たな実習船ができたことは静岡県、また水産業界にとって意義深いものと、大変期待されています。これに応えることが我が校の使命として、「やいづW世」を活用し、更なる航海実習の充実を図っていくとともに、「夢とロマン」のある海洋教育を実践してまいります。