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この人に聞きたい:第221回
(週刊水産タイムス:09/12/14号)

仕掛けた変化 断じてやり切る

日本水産(株)社長  垣添直也氏

 

ファインケミカル拡大に手応え

 日本水産の垣添直也社長は10日、年末の記者会見を行い、@今年を振り返っての所感A新TGL計画の進ちょく状況B外部環境の変化に対する対応――などについて語った。今年は「変革」をキーワードに掲げ、大掛かりな組織改編を行ったほか、グループ経営の改革にも取り組んだ。

 水産・食品とも決して生易しい年ではなく、日水グループにとって大きな変革の年となった。取締役会と執行役員会を分け、水産と食品の両輪を一元管理する事業推進本部を立ち上げ、在庫投資会議、マーケティング会議、研究推進会議、FC事業推進会議、グローバルグループ経営推進会議を新たに設けた。マーケティング部門と販売部門を立て分けたことから相当の混乱も予想されたが、結果的にスムーズに機能できた。
 いつの時代も現状を変えるのは難しい。他人がやってくれる「Change」は賛成でも、自分が変えることは好まないものだ。日水は1931年の世界大恐慌に前後して、いくつもの大きな変革を遂げた。甚だしく魚価が下がった時に、起業者の國司浩助氏は「このような時こそ販売の仕組みの変革が要る。小まめにかつ細心の注意を払い、必要に応じて広告宣伝をし、一歩一歩消費者に近づく。このようにして得たお客様は永久に我々の味方である」と当時の社員を鼓舞した。1921年に飯山太平氏(1920年入社、初代水産庁長官)が日本初のちくわ事業を開始。30年には岩本千代馬氏がトロール船の船内に初めて急速凍結装置を導入した。
 同年、加藤舜郎氏が日本初の冷凍食品を開発。33年には藤永元作氏が世界で初めてクルマエビの人工産卵に成功、その後の完全養殖につながっている。37年には白洲次郎氏がザロッチェンチェフ式急速冷凍装置を導入し、冷凍魚の普及と輸出を実現した。
 このような多彩な先達の間で共有された「志」が連鎖し、強力なサプライチェーンを構築。未曾有の危機を克服して反映の時代を築いた。当時の教訓とされた「細心の注意と不断の努力、難関を突破する勇気」が変革を成し遂げることは今も通じるように思える。
 今年はサケ・マス以外、エビ、油飼・ミール、スケコ、スリミとも前年に比べ単価安の状態となった。ここ数年苦しんだチリのSA社(サルモネス・アンタルティカ社)のサケ養殖事業は黒字化した。女川のサケ養殖も順調。黒瀬水産(ブリ養殖)も新たに「若ぶり」を扱うことで良くなってきた。中谷水産(マグロ養殖)はマグロ価格の大暴落を受けて苦しい展開。当初はキロ3500円だったが、単価が1000円以上ダウンし、採算が取れる2500円を割るところまで来ている。インドネシアのエビ事業もまだ厳しい。
 食品事業は、家庭用冷食の焼きおにぎりでプラスチックの異物混入事件が発生したが、その後は順調に販売。新たに挑戦しているグラタンや焼きカレーも人気が出ている。業務用は価格低下をいかに防ぐかが課題。品質にこだわって、商品や売り方をどう進化させていけるかにかかってくる。
 大規模な投資を行ったファインケミカル事業は、医薬原料から食品素材、化粧品素材、飼料素材、工業用素材と扱う分野が広がってきた。
 全体として、守りを固める時期から、守りながら攻める段階に入った。仕掛けた変化をやり切る年にしなければならない。

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