この人に聞きたい:第228回
(週刊冷食タイムス:10/02/16号)
低価格化に「うまさ」で攻める
(株)大龍 代表取締役社長 日下秀氏
(くさか・しゅう)昭和45年伊藤ハム栄食入社。製造畑。東京工場長を経て昨年5月同社に転じ社長に。東北学院大経済卒、昭和23年3月宮城県築館生まれ、61歳。
伊藤ハムと協働で12%増収
中華専門店の味を冷食で提案する大龍。国内製造していながら「中華」つながりで天洋食品事件の打撃を受け、高質・高級であるがゆえに低価格化でも影響が避けられない。立て直しを図る日下社長に対策を聞いた。
――低価格一辺倒。高級・高額の大龍には逆風がきついのでは。
日下 昨年5月から立て直しを任されて1年を経ましたが、覚悟はしていたものの、リーマンショックを起因とする経済不況の打撃は予想以上に厳しい。世の中の低価格化の流れに高級・高額商品で立ち向かうのは本当に難しい。
――コストダウンが不可欠。
日下 当然、当社もあらゆるコスト削減対策を講じてます。無駄取り、機械化・自動化、作業の効率化などに取り組み、それなりの効果は生まれています。しかし大龍の製品は基本的に機械による大量生産とは異なり、レストランの厨房で作るのと同じような手造り工程が多いので、単純に生産効率アップが難しいのは宿命です。
――しかしコスト対策は大事。
日下 親会社伊藤ハム時代の経験を生かし、工場のライン稼働率改善、導線の見直し、食材の無駄な廃棄削減、不良品抑制などに取り組んでいます。効果はあります。
――それでも低価格品を求められると、対応が厳しいのでは?
日下 確かに市販用は難しい。扱いが残念ながら落ちています。業務用でも低価格化要求はありますが、当社は幸い、製品だけでなく、ソースや調味料など味の決め手、ノウハウを持っているのが強み。コストを抑えるため加工食品の仕入れを減らした外食店から調味料等のオーダーが増えるという新しい流れも見られます。
――立て直しのため売上げのV字回復を政策に掲げているが。
日下 当社は伊藤ハムのグループ会社。その強さを販売に結びつけるため伊藤ハムとの協働を強化しています。今期は売上げ16%増という高い目標を掲げていますがコラボの成果で12%増と実績に結びついています。また社内では自由な意見交換を尊重しています。欲しい商品を営業から提案させ、開発、製造部門と議論を重ねて商品を具現化する取り組みも進めています。売る立場、つくる立場が相互の立場を理解し合い、これはいい結果につながっています。
――中華レストラン「大龍門」を吉祥寺と池袋に持っている。
日下 吉祥寺店は利用客が安定しており、収支もいい。池袋店は駅前立地ながら地下にあるため目立たない。そこで地上から店内の様子が見える画像を出します。
――冷凍食品では業界一高価な「おせち」を手掛けているが。
日下 低価格化の一方、おせちは好調、主力販路の1つでは前年の2倍となりました。在宅需要とともに「うまいものを食べたい」という求めもあると思います。
――新年度はどう攻める?
日下 市場は厳しいと思いますが、引き続き6%増収をめざします。生産はコストダウンを進め、販売面では新製品を様々提案します。強さを生かして頑張ります。