この人に聞きたい:第242回
(週刊冷食タイムス:10/06/01号)
若手の自主性引き出す役どころ
(株)サトー商会 次期社長の専務取締役 玉根 裕氏
(たまね・ゆたか)昭和51年9月入社。平成7年郡山サトー商会社長、14年本社専務、営業総括から管理本部長。26年4月塩釜生、早大政経卒、59歳。趣味多彩。
到達点と達成時期明確にし人育てる
業務用流通の中でも高収益の優良上場企業、しかもJFSAの中核で、同会を育てた佐藤正治氏が創業者のサトー商会。突然の社長交代発表は業界に衝撃を与えた。何が起きたのか、また玉根氏とはどんな人なのか。
――突然の交代発表、驚きが業界に走った。何があったのか。
玉根 驚いたでしょうね、私が一番驚いてます。創業家で、極めて優秀な経営者でもある佐藤正之社長がお元気だし、これからも佐藤社長が当社の社長を続ける、と私も、社員も思ってました。4月に「任せる」と言われ、「まさかぁ」というのが本音です。私は会長、社長が持つ個性もカリスマ性もまったくありません。佐藤家の一員でもない。しかし「だから」と言われればやるしかないでしょう。
――佐藤社長は交代の理由を若手の自主的な行動を促すため、と本紙に発表直後説明しているが。
玉根 以前からそう語ってました。社員も我々役員も、佐藤社長の言う通りに動けばOKだった。それを疑いもしていなかった。しかしそれではサトー商会の発展はない、と社長は懸念してました。私を選ぶことは苦渋の選択だったと思いますが、それは社員も同じ。私で「大丈夫かいな」とだれでも思いますよ。みんなが不安に思う。だから社員が気を引き締め、自分たちで考える。佐藤社長のねらいはそこにあります。私でも社長に指名されるんだから、やれば誰でも社長になれる、そう思えることも当社にはいいことでしょう。
――やってやろう、の心意気?
玉根 そんな威勢のいいものじゃないですよ、不安で一杯。しかし「なんとかなるさ」という開き直りもあります。これまで何度も挫折してきましたが、落ち込んでいてもなにも変わらない。佐藤正治会長に鍛えられたことは間違いではないと信じ、やるだけです。新体制準備のため、幹部と毎日早朝打ち合わせを重ねています。
――新体制の基本姿勢は?
玉根 練り上げているところですが、サトー商会の社員は目標もそのための方法も知っている。しかしいつまでにどの到達点をクリアすべきか、その点があいまい。そこでまず部課長にこの点を徹底し、目標を達成する集団にしたい。わかりやすく説明すれば、絶対にわかってくれます。郡山サトー商会時代も社員に目標の到達点と達成時期を徹底して求め、人材が育ちました。食品問屋業というのは人材が全てですよ。
――学生時代はどんな生活?
玉根 早稲田で「旅の会」というサークルに属し、1人で貧乏旅行を重ねてました。出身校の仙台一高がバンカラ気質で、貧乏が美徳、誇り。当時は「かに族」とも呼ばれました。面白かったですね。
――ストレス解消法は?
玉根 鉄道模型(ジオラマ)づくり、乗り物は何でも好きですね。戦艦大和の1mの模型は5年がかりで仕上げました。忘我の心境になれます。クラシック音楽、特にベートーベンは熱狂的なマニア。ヨガにも通ってます。妻とは温泉めぐりも。いろいろやってます。