この人に聞きたい:第252回
(週刊冷食タイムス:10/08/10号)
タイの鶏事業で大幅投資
(株)ニチレイフーズ 代表取締役社長 相馬 義比古 氏
(そうま・よしひこ)昭和48年日本冷蔵入社。冷食営業畑を歩み、広域営業部長などを経て分社で副社長。平成19年社長。独協大卒、昭和25年4月東京新宿生、60歳。
原料から加工まで自営化
ニチレイフーズがタイで取り組んでいるチキン事業がいま業界の話題の一つ。投資額も工場規模も半端ではない。しかし相馬社長の目に映っているのはタイだけではなくもっと大きい。改めて胸中を聞いた。
――第1四半期で加工食品は予想を8億円上回る利益を稼いだ。苦しい時期は過ぎた?
相馬 重荷がなくなりましたからね。高値で買い込んだチキンの在庫が前期中に一掃、やっと身軽になりました。タイの工場稼働を待っているところ。
――80億円を超える投資だが。
相馬 特に新設するGFNの工場がポイント。ライフバード(生鶏)の処理から部位カットまで行なうスローターハウスを併設しているのが特徴。新工場には約3000人配置しますが、そのうち2000人はスローターハウスの従業員。科学的知見に基づき、生鶏のアミノ酸含有量をチェックし、熟成度なども細かく管理します。コスト管理も当社自ら関与し、歩留まりなどもニチレイフーズの技術で取り組みます。あまりの巨額の投資に社内でも議論はありましたが。
――国内外を通じてチキン加工工場としては破格の規模。本当に回し切れるのか、と?
相馬 確かに相当大型工場になりますが、事前の営業案内で既に1日11万羽のリクエストをいただいています。これは当初見込みを1万羽上回る。ご祝儀価格をねらったスポット受注ではなく、我々は一緒に取り組んでいただけるところと組みます。品質にも、生産性にも自信はあります。
――何が一番の違い?
相馬 これまでは生鶏を処理した後の製品価格しかわからなかったが、我々は原料から関与することで“スローターコスト”もわかる。同業他社もできなかったんではないだろうか。チキンを海外生産する場合のコスト構造を完全に掌握したという点では業界に相当貢献すると自負しています。タイで生産するが、我々が関与し、日本のお客様にお届けするため「ヒノマル」を掲げた工場。その誇りを強く持って運営します。OEMの仕事を広げたのとは訳が違う。
――パートナーとも議論を相当重ねているようだが。
相馬 生産性、歩留まり、品質管理、収益目標など細かなところまで話し合っています。そこが従来の仕入れ販売とは異なる点。海外では現地パートナーとなにかしらトラブルが起きがちだが、時間をかけて我々は協議してきた。
――その真意はどこに。
相馬 冷食事業の環境が大きく変化しており、当社の位置づけも変わった。ここで新たな戦略を立ち上げ、それにきっちり取り組まないと次の成長がない、と考えています。特に工場は食品メーカーの生命線。そこで、タイに限らず、中国でも国内でも必要なところにはきちんと投資し、次世代対応を進めています。その中でも際立って大きな投資がタイ。中国にも期待しています。中国では若者を中心に大きな意識変化もあります。即席麺が全土を席巻したように、冷凍食品も一気に“来る”かも。