この人に聞きたい:第335回
(週刊冷食タイムス:12/04/03号)
冷凍野菜の第2工場が竣工
農業生産法人(有)四位農園 代表取締役社長 四位 廣文氏
(しい・ひろふみ)学卒後、農水省の園芸試験場で学び、四位農園(1965年創業)に。10年前から社長。6年前から冷凍加工を手掛けている。51年10月生まれ、60歳。
海外市場、2次加工を視野に
宮崎県小林市の四位農園は先月末、小林市に隣接する高原町に冷凍野菜の第2工場を完成させた。フル稼働すれば処理能力はこれまでの3倍以上になる。四位廣文社長の目線の先には海外市場がある。
――凍菜の第2工場が完成した。
四位 本社の工場をこれ以上広げると周辺環境に影響するため、新工場の建設に踏み切りました。今月から稼働開始します。スタート時はIQFの1ラインのみで、スペースにはまだ余裕を残しています。主に市販用の生産が伸びていくと思います。当社の製品には生鮮や乾燥加工品もありますが、今は冷凍の売上げが一番大きいですね。
――冷凍加工は6年目に入った。
四位 当初はまったく未知の世界でしたが、栽培する側と製品を扱う側の価値観に違いがあることがよく分かりました。安全なのはもちろん、見た目の良さや顧客のし好を満足させなければなりません。自称ですが、原料はAクラス、加工はCランクだったのが、加工がBランクになりつつあります。これもAランクにするつもりです。私が今、一番感じているのは、畑・工場で働いている人たちの理解度が高まってきたことです。これが一番大きなポイントだと思います。
――冷凍加工に比べると、栽培のキャリアは長い。
四位 若い頃から欧米、オセアニア、アジア各国と多くの産地を見てきました。品質に対する考え方の違いや、良い面、悪い面の両方を見ることができました。ただ、肝心な部分は企業秘密でもあるため、そう簡単には教えてくれません。なので、こちらでイメージするのです。角度を変えていろいろな産地を見ていくと、分かるようになります。それがいい結果に結び付けば『間違っていなかったんだ』と思えるわけです。もともと好きなんですよ、作物を育てるのが。どうすればもっと良くなるのか、常に考えています。
――海外市場も視野に入れているとか。
四位 宮崎は東シナ海から流れてくる雲が霧島山系にぶつかり、雨が降ります。豊富なミネラルを含んだ水資源と土壌で育った野菜は、他産地と品質面で差別化できます。これらを中国や東南アジアに輸出することも考えています。国内向けは2次加工にも参入します。さらに、新工場に原料を供給するため、都城市にパートナー企業と新会社を先月設立しました。近い将来、当社グループの作付延面積は500haに拡大するでしょう。
――やることがたくさんある。
四位 この年になって、いろいろなことができるようになり、世界が見えるようになりました。やれることはたくさんありますが、私が関わるのは第2工場の竣工まで。その後の海外輸出や野菜の2次加工は次世代に託します。今はそのための人材育成に力を入れています。幸い、多くの若者が入社を希望しており、意外に狭き門になっています。