この人に聞きたい:第337回
(週刊冷食タイムス:12/04/17号)
定番の食材をちゃんとお届け
堂本食品(株) 専務取締役 営業本部長 堂本 好壮氏
(どうもと・こうそう)学卒後、米国コロンビア大に2年間。帰国、入社後は16年間経理。40歳で営業に転じた。昭和26年9月広島生。修道高から慶應商卒、60歳。
無理な拡大より細く長く
佃煮、煮物など和惣菜を得意とする堂本食品。厳しい事業環境の中で生き残るために「ニッチ市場をコツコツ地道に埋める」道を選び、業務用に軸足を置いたが、着々と成果に結びつきつつある。
――震災で揺れ動いた昨年の市場、前期の着地は。
堂本 市販用で落とした分、業務用が5%増で固く売りを伸ばす、という動き。大きく伸びるわけではないが、落ち込むほどでもない、というのが私どもクラスのメーカーの実情。「5引く2」の世界がある一方で「3足す2」もあります。ならすと2〜3%の売上げ増です。
――どんなものが伸びてる?
堂本 オーソドックスな商品です。ひじき、きんぴら、切り干し大根、筑前煮等々。変わったものよりも「普通のものをしっかり届けてほしい」とお客様には求められます。そこに安全安心の裏付けが必要なのは当然ですが。こうした昔ながらの和惣菜に焼き魚などを加えれば、宿泊施設、あるいは高齢者施設等の顧客は朝食メニューが揃います。しかも手間暇かけずに出せるのがポイント。
――新製品よりも安定した食材供給が求められる?
堂本 秋はさつまいも、たけのこ、春はひな祭りに向く食材など季節性のある提案は当然ながら重要ですが、我々が扱う食材はNB商品としてどんな業態にも合う商品ばかりとは限らないので、得意先のご要望に合った規格、荷姿などを考え、個別に提案しています。最近では高品質の原料を使った昆布の高級品を、などというリクエストも来ています。顧客の要求は様々ですから……。
――高齢者に焦点を当てた取り組みを進めている。業務用に軸足を置いた新戦略、成果は。
堂本 元々は佃煮が得意なメーカーでしたが、この分野は競合が激しいのはご存じの通り。そこで新ジャンルとして「皮むき甘栗ぱっくりりん」を97年に取り組み始めたところ、これが大ヒット。大口顧客にも多数採用され、売上げも急拡大しました。しかしその後は乱売で急降下。残念ながら営業の質も落ちました。これを教訓に、身の程をわきまえた展開、1件当たりの取引高の大きさよりも、多くの取引先に長く喜ばれる企業になろうと企業の基本姿勢の転換を図りました。
――ヤヨイ食品出身の城口山司郎氏が改革を支えた?
堂本 営業副本部長として来ていただいてから、社内が本当に変わりました。若いセールスが本当の営業の動きを初めて城口さんから学んだというぐらい。業界の顔の広さもピカイチ。これまでお目にかかれなかった有力卸店のトップとも親交が深まっています。
――常温、チルドから、いずれは冷凍食品の世界へも?
堂本 冷凍原料の扱い、あるいはおせちなど一部冷凍食品にすることはあるでしょうが、絶対に冷食ありき、とは考えていません。冷凍食品という“大海”に出れば沈められるでしょう。身の程はわきまえているつもりです。