この人に聞きたい:第357回
(週刊冷食タイムス:12/09/11号)
旭食品と卸2社の経営統合来年1月
旭食品 代表取締役社長 竹内 成雄氏
商流、物流、情報を5年内に一元化
旭食品の竹内成雄社長はフードランドの会見で中期5カ年計画の進捗状況と、北陸のカナカン、東北の丸大堀内との経営統合といえる持株会社の設立について、現状を詳細に語った。
<中期計画について>
4月から7月までの全社売上げは100.4%。8月はそれを上回るペースだったので、8月まで売上げは伸びている。
問題は9〜12月。この4カ月間が最も大きな予算を組んでいるので、頑張っているところ。
小売店は価格競争のさ中にあり、当社に限らず中間流通は粗利が下がっている。高収益をあげている問屋は販売管理費を絞って最終的に利益を出していると思う。
当社は比較的粗利が高いが、前期と比べ粗利が0.3ポイントほど下がっている。コストは昨年と比べ上がってはいないが、利益減に見合うほどのコストダウンはできていない状況で、結果的にちょっと低調。予算を割り込んでいる。
当社は(地域密着など)メガ卸とは違うビジョンで事業展開している。一時は7千社あった得意先を今は5千社に減らしたが、それでも他社より多い。売上げは上位集中が進んでおり、前期は上位100社で売上げの75%を占めた。幅広い得意先を持っているので社員も多い。7千億円の売上げで当社の半分しか社員がいない卸もある。
当社は人口が少ない地域の小さな店にも商品を届けており、地域密着のビジョンからある程度そういう効率的でない仕事も容認してきた。このビジョンは変わらないが、これだけ小売業が上位集中になると、人員を使い放題でいいのかということになる。届けるにしても、もっと他に方法があるのではないかということが大きな課題となる。
中期5カ年計画の「ISHIN」で策定した6つの営業戦略は間違ってはいないと思っている。
管理部門のコストの削減は効果が上がっている。
2つ目は小売業界が変せんして全国の流通を持っていない卸は排除される可能性が高くなるので、対策が必要ということ。全国の流通網を作りたいと3年前から言ってきた。実際に、当社の最大の得意先の1つも今春から全国一律帳合のシステムに変換することになった。恐らく大手量販店やディスカウンターもそうなり、「この地域だけ守れればいい」という考えでは難しくなる傾向が強まっている。
この点では3社の経営統合がぎりぎり何とか間に合ったと思う。あとは北海道が残っているが、投資効率もあるのでこれから考えなくてはならないが、一応準備はできた。
3つ目は、業務用の拡大。これから中間流通業は2つの形態に分かれていくと考えられる。量販店やコンビニエンスを顧客とする上位数社の卸と、外食産業を中心とした地域の家族経営的な業務用問屋の2形態。外食チェーン店を除きシステム化しにくい。
そこで当社は業務用卸のミツヤス、大倉を傘下にし、四国では業務用専業子会社を設立している。しかし、M&Aは相手もあることであり、候補は挙がっているが、次は決まっていない。今後も積極的に相手探しをする
幸い、業務用で寿司業界は予想以上に好調で、大倉の売上げは8%増ほど。大手量販店とは全く違うレベルの利益率で好調に推移している。ただ、のれん代があるので、償却に時間がかかる。それでも期待以上の成果が出ている。
業務用のもう1つの柱であるスーパー惣菜は、今展示会でも数々の提案で強調しているが、思うようには進んでいない。中期計画最終年で600億円にする予定だが、今のところ300億円ほど。この部分は商品開発を含めもっと追求していく。
4つ目の海外市場の模索については、食を中心とする進出を、若手中心に進めてきた。
大倉の寿司種がタイで生産されていることもあり、来年にはタイに事務所を置くことがほぼ決まった。すべて自社で手掛けるのではなく、現地の企業と組む。外食向けの流通を手掛ける。これを海外の出発点にしたい。
5つ目はエンドユーザー事業。テレビ、ラジオ、通販など新しいチャネルが増え、これからもどんどん開発される分野だ。
当社でも手掛けており、いきなり爆発的に増えるというものでもないが、徐々に伸びている。恐らく今年は2億5千万円ほどになる。
どれだけ通販に適した地域の商品を見つけられるかが勝負となる。量販店の商品とは全く違う。こんなものが売れるのかと思うようなものが突然売れる反面、売れそうなものが売れない。色々なチャレンジをしたい。チャネルは10ほどになったが、自社のチャネルも強化しなくてはいけないだろう。
6つ目の生産事業は堅調。デリカサラダボーイなど多数手掛けており、当初は大変だったが、今は当社の経営を支えてくれる分野になっている。ノウハウがついてきた。投資が大きいので次から次とはいかないが、これからも製造部門は伸ばしていきたい。
新持株会社、竹内氏が社長に
<3社の経営統合>
3社の経営統合については7月4日に突然発表したが、基本合意は終わり、そろそろ最終合意となる。
3社は10月の24日までに株主総会を開き、それぞれ会社分割を行なう。旭食品は従来の会社と事業会社に一端分割する。仮称だが、旭ホールディングスと、新旭食品となる。カナカンと丸大堀内も会社分割する。
その後、来年1月に3社のホールディングスが合併し、各社の事業会社の資産を保有する。純粋持株会社であり、1月26日の設立となる。存続会社は旭ホールディングスだが、これは形だけであり、対等の合併。旭が存続会社となるのは単純に当社の土地や建物などの資産が大きいから。そうしないと税金など非常に費用がかかってしまうという理由がある。売上げ規模の問題ではない。
もちろん、純粋持株会社を作ることそのものが目的ではない。最終的には商流、物流、情報を一本化したいが、これが難しい。体制も地域性も違う。実際、グループ会社であってもなかなか進まない例もある。各社の社長と話し合いを進めてきたが、大局は賛成でも細部の調整は難しい。
合併すれば簡単なのだが、給与体系や就業規則の違いがひっかかってくる。赤字会社がでてきても困る。地域性も強く、配慮が必要。
大半は自主性に任せることになるが、財務は1つになるので、ホールディングスで決めるべき重要決議事項は最終合意書に明記した。
ホールディングスの決議事項は、新設の大きな設備投資やM&A、どこかの企業が窮地に陥るほどの財政になった場合のことなど。ホールディングスの取締役会で決める。まずはその辺からやっていかざるを得ない。徐々にホールディングスの意思決定範囲を広げる。
機能としては、当初は商流面から入りたい。組織も、まず営業部門は3社の商流戦略を一本化する。NBについてはAランク、Bランクとメリハリをつけたい。
ランクは決して売上げ規模で決めるものではない。3社の取り組みに理解を示してくれるメーカーなど、違いがあるということ。価格交渉にしてもこちらの規模が大きくなったから安くしろというのではなく、こちらは義務を果たし、それに協力してもらう関係で集中と選択を図る。
もう1つは地域商材。各社が特に力を入れている地域商材がある。こういうメーカーは全社が力を入れて拡売していこうと考えている。
営業の面では、広域の問題がある。地域だけ守っていればいい時代ではなくなっている。当社も広域の部分は全てホールディングスに移したいと思っている。
当社と取り引きしているコンビニも、条件として各社別々の取り引きではなく、ホールディングスでと求められている。ドラッグストア、ディスカウンターも今急激に広域化をしている。
CGCも広域が求められるのでアライアンスネットワーク(ANC)で契約を結んでいるが、これは急には変えられない。ANCには三菱商事の資本が18%入っているし、スハラ食品とヤマキも参加している。従って発足と同時にホールディングスに移すことはできない。
ただ、できるだけ早く、1年以内にはホールディングスに移したい。
それにはホールディングスに入っていただかなければならず、確実に入るのはカナカンと丸大堀内の2社。スハラ食品は伊藤忠食品の資本が入っているので、今のままでは難しい。ANCはいったん解散してホールディングスの中の部署に組み込むことになるだろう。
ホールディングスはできるだけ小さい組織にして事業会社の負担にならないようにする。事務所の賃貸料に若干の上乗せ程度で運営する。
情報の一本化については、各社とも情報システムのリース期間もあり、すぐにとはいかないが、5年以内に各社のホスト、マスターを統一したい。各社のシステムを統合すれば相当のコストダウンになる。
新会社のホールディングスは本社を東京都港区新橋の旭食品東京本部のあるビルに置く。役員構成は、私が社長になることが内定している。取締役は合計7名。役員は(代表取締役を含め)2社からそれぞれ2名きていただく。2社の社長にはそれぞれ代表取締役についていただく。旭食品からは3名、常任監査役を含めれば4名となる。
リーダーは必要なので、これは当社がしなくてはいけないだろうと、各社の社長からも了解を得ているし、求められてもいる。逆に言えば、当社のリーダーシップが問われることになる。
当初は相当の苦労があると覚悟している。次はどこが加入するのかとよく聞かれるが、基本的には歓迎する。どこでもいいというわけでもないが、賛同してくれるところはあるかもしれない。
全国カバーによりメガ卸と同じ戦法で行こうとは思わないが、地域の特色を生かしながも協力して効率化できるところはあると信じている。
ホールディングス合併後の新会社の名称は決まっていないが、いずれかの企業名を使うことはない。ロゴマーク等と共に専門家に任せている。