この人に聞きたい:第367回
(週刊冷食タイムス:12/11/20号)
国内外に新たな拠点準備
味の素物流(株) 代表取締役社長 田中 宏幸氏
(たなか・ひろゆき)昭和51年味の素入社、執行役員を経て平成20年ギャバン社長。23年退任し6月から現職。昭和28年4月神戸市生まれ、59歳。慶大法学部卒。
共配から「クラウド物流」へ
味の素物流は仙台、川崎市の東扇島、埼玉県久喜市に新拠点の開設を準備している。さらに海外で新拠点を検討中という。意欲的な事業展開を図る同社の最新業績や組織改編の目的などについて田中社長に聞いた。
――倉庫の新設予定は。
田中 東日本大震災で壊滅した仙台低温物流センターは再来年2月に新設する準備を進めています。賃借する拠点は川崎市東扇島や埼玉県久喜市で開設を準備中です。再来年4月稼働予定の久喜市の拠点は、味の素が工場で生産した製品を在庫し配送センターに補充する役割を果たします。味の素グループの物流拠点として初の免震構造を備える有事対応型の拠点です。
また海外でも、強力なパートナーである味の素の事業展開に合わせ、新拠点を検討しています。
――業績推移について。
田中 前3月期まで増収増益で推移してきました。前期は震災も増収増益の大きな要因となりました。今上期も増収増益でしたが、親会社がカルピスを10月1日に売却したため、飲料系の荷が大きく減る。その影響が下期に大きく出ることは確実で、減収が予想されます。当社年商の1割弱を占めたカルピスの物流業務がなくなるわけで、早急に固定費のバランスを取るべく作業を進めています。
――取り扱う荷物の構成比は。
田中 95%は食品で、そのほかフィルムやアミノ酸系素材、原料、実験動物まで扱っています。食品の約3割が冷凍食品です。様々な物流の営業に取り組む事業部は従来、ドライと低温の温度帯別で分けていましたが、今年7月に改編を行ない、ネットワーク事業を担う第一事業部、ダイレクト事業を担う第二事業部に分けました。
――ダイレクト事業(第二事業部)について具体的に。
田中 象徴的な荷が実験動物です。その品質に特化して物流を担うため、共同配送は出来ません。物流そのものが商品の品質に大きく影響し、競合他社に明らかに出来ないノウハウがあります。流通企業の物流業務もカスタマイズして第二事業部が担っています。
一方、物流特性が同じもので共配のネットワークを作るのが第一事業部です。同事業部は加工食品、飲料、冷凍食品の営業部に分けています。カルピスとほんだしは物流特性が異なるため一緒に運んでも物流効率は良くなりませんが、ほんだしとクックドゥ(レトルト調味料)を一緒に運べば物流の効率化につながります。こうした共配のネットワーク作りを第一事業部が担っています。このネットワークを郵便局のように社会インフラにまで発展させた「クラウド物流」の実現に向け、業界に協調を促したいと考えています。
――クラウド物流?
田中 冷凍食品メーカーも問屋も運送費で競争をするべきではないと考えます。良い商品を紹介し、開発し、メニュー提案を行なうのが本来の仕事でしょう。物流費の差で競争するのは止め、配送は社会インフラ化を図るのが望ましいと思います。