この人に聞きたい:第369回
(週刊冷食タイムス:12/12/04号)
来期、念願の1000億狙う
高瀬物産(株) 代表取締役社長 高瀬 知康氏
(たかせ・ともやす)昭和41年11月26日生まれ、先週46歳になったばかり。高瀬孝三会長の長男。趣味は食べ歩きとゴルフ。米国カリフォルニアの大学卒。
「高瀬物産に頼む」という理由づくりへ
外食卸の高瀬物産は4月1日付で社長交代。父親で創業者の高瀬孝三会長からバトンを受けて8カ月余り、会長の念願だった「年商1千億円」という大きな課題を引き継いだ高瀬知康社長に、近況を含め話を聞いた。
――社長と会長の役割分担は。
高瀬 5年ほど前から役員や幹部社員への権限移譲を進め、私は2年前から代表権を持つ副社長を務めてきましたので、実務面での大きな変化はありません。私が経営全般をみて、会長には業界団体などをお願いしています。
――今3月期の売上高は前年比4.5%増の910億円(前期870億円)を目標に掲げている。
高瀬 4〜10月は前年同期比5.5%増で推移しており、通期目標は達成できる見通し。前半は前年の大震災の反動で苦しみましたが、4〜8月で回復、9月は少し厳しかったが、10月に持ち直し、11月はさらに回復しています。
――上場はめざさないのか。
高瀬 社内に監査を入れて、いつでも前に進める準備だけはしていますが、バブル経済の頃とは景気が一変。上場にはメリットとデメリットがありますから、慎重に見極めていきます。
――高瀬物産は基本的に直販、しかも自社便で配送している。
高瀬 直販100%で地域ごとの細かい仕事なので、営業と配送はそれぞれの業務に専念する体制にしています。一部の外食チェーンを除き9割9分が自社便。全国5万5千軒の顧客に伸びる毛細血管のようなものです。ルートセールスの良さもありますが、配送しながらの営業は疲れ、顧客に対して満足のいくものになりません。広域にわたって60拠点を配置するのも、顧客のためにきっちりと仕事をするため。配送に関しては契約社員なども活用していますが、基本はやはり社員です。
――教育が大変だ。
高瀬 新卒で入社してくる社員は、まず礼儀作法や顧客への接し方などを学びます。時間はかかりますが、遅延や欠品なく仕事を進める上で欠かせないもの。安全運転教育や、個人の目標管理・評価も実施しています。最後は人と人の結びつきで決まる仕事。初心を忘れないように、7月の創立記念日には私も含めて役員・幹部全員が配送車に同乗して顧客を訪問します。
――営業には何を求める。
高瀬 顧客の立場に立って、何をすればお役に立ち、喜ばれるかを感じ取って欲しい。商品提案だけでなく、仕事の半分は情報提供。人間・情報・物流をしっかりと提案できる営業に育って欲しいと願います。値段だけの戦いは、どちらかが倒れる不毛なもの。「同じ値段なら高瀬物産に頼む」という理由づくりが営業の仕事。食に関するトレンドや情報を常に発信し続けていきます。
――来期の抱負は。
高瀬 顧客との密接な関係作りで大きくなってきた会社なので、役員体制が代わった今期と来期が重要。会長の念願だった1千億円を目標にまい進します。