この人に聞きたい:第377回
(週刊水産タイムス:13/02/04号)
輸出拡大支援を強化
ジェトロ(日本貿易振興機構)理事長 石毛 博行氏
ジェトロ(日本貿易振興機構)が昨年1月に設立した「農林水産物・食品輸出促進本部」が1周年を迎えた。石毛博行ジェトロ理事長は1月31日、東京・赤坂のジェトロ本部で会見を開き、輸出促進に向けたこれまでの取り組み事例や今後の重点課題などについて語った。
相談件数は4500件、規制が中心
ジェトロの輸出促進本部は、国内38カ所の貿易情報センター(ジェトロ本部・大阪本部含む)と、世界55カ国73カ所の海外事務所をフル活用し、農林水産物やその加工品などを輸出する事業者へのサポート事業に取り組んできた。
今年度の取り組み実績は(1)海外見本市への出展15回(2011年度実績は6回)(2)海外バイヤーを招いた商談会を26都市で計40回開催。世界31カ国・地域から176人のバイヤーを招へい予定(2011年度は25回、134人)(3)海外コーディネーター(17都市・21名)による情報提供(4)輸出セミナーの開催――など。
また、昨年1月に国内38カ所に開設した輸出相談窓口には合計4553件(2012年12月末時点)の相談が寄せられたという。原発関連、輸入規制、食品添加物、ラベル表示など規制や手続きに関する内容が中心だった。
石毛理事長は「農水省内に“攻めの農林水産業推進本部”がこのほど設置された。ジェトロとしても国内外の拠点を活用し、輸出促進を一層強化していきたい。この1年で輸出事業者のすそ野は拡大してきた」と今後の抱負を語った。農水省の25年度予算ではジェトロ向けに10億円が拠出される予定。
最重要拠点・北海道事務所を増員
来年度の課題として(1)輸出事業者の育成・スキルアップ(2)海外に向けた情報発信(3)全国各地でのサポート体制の強化――などを挙げ、輸出促進における重要拠点として位置づける北海道事務所の増員(2名増員し4名に)や、輸出産品を発掘する役目を担う人員を帯広・旭川・函館に配置する方針を示した。
石毛理事長は「すそ野の拡大に加えて、今後は具体的な輸出品をどのように掘り起こしていくかに注力する。関係省庁と連携し、成功事例を増やしていきたい」と意気込みを語った。
大きな課題の1つである物流コストの削減に向けては、昨年9月に民間実務有識者から成る「農林水産物・食品輸出ロジスティクス研究会」を立ち上げ、議論を交わした。来年度からは、小ロット(少量多品種)でも効率よく輸送するための共同輸送システムの実証モデル事業を試験的に開始する予定。
ジェトロは優先7品目として(1)日本酒・焼酎(2)緑茶(3)水産品・水産加工品(4)果実・野菜(5)畜産品(6)コメ(7)木材――の輸出促進に注力している。