この人に聞きたい:第379回
(週刊冷食タイムス:13/02/19号)
史上最強の『ギョーザ』6割増
味の素冷凍食品(株) 取締役専務執行役員 生産本部長 後藤 隆之氏
(ごとう・たかゆき)昭和57年味の素入社。平成13年味冷。17年取締役生産本部長。常務を経て23年取締役専務執役。昭和33年8月茨城生、慶応大工卒。54歳。
未知の数量を機能連動で実現
味の素冷凍食品の「油・水いらず」の餃子は秋の導入直後から前年の1.6倍という驚異的伸び。単品で業界最大のスーパーアイテムがさらに未知の世界に踏み込んだ。これを支えた生産現場ではどう対処したのか。
――“史上最強”のギョーザ。営業部門は「ミニマムでも10%増の117億円」と予想していたが。
後藤 10〜12月平均で55〜56%増。ミニマムの予想の1.5倍も出ています。それまでも出荷数量は大きかったんですが、さらにその6割増。蒸し能力は、凍結能力は大丈夫か、とハラハラどきどき。事前に生産能力、製品合格率、出荷可能数量などを把握し、大丈夫とは判断していましたが、実際に強烈な受注数量を見て、本当に大丈夫か、とやっぱり心配でした。
――経験のない数量。どうやってクリアしている?
後藤 実際に数量をカバーするには、生産本部だけでは無理。営業(マーケティング本部)との連携、ロジスティクス部、情報システムとも連動しながら、供給が滞らないように、効率よく不足なく、無駄なく運ぶ仕組みを議論し、連携することができたのが一番の理由。製販と物流、システムが本当にうまく連動できました。
――しかし、普通なら限界超え。
後藤 当然、増産計画を立てて準備はしていました。基本的には時間延長でカバー。それでも想像以上の出荷量。一時は「合格品」在庫が1〜2日分となり、青くなったこともあります。12月までずっと気が抜けない毎日でした。
――「ギョーザ」に続き、今春は“W炒め製法”の炒飯、“2層包み製法”の焼売と、新技術を駆使した商品提案が続く。
後藤 新たな心配が増えます。餃子同様、炒飯も焼売もテスト段階ではOKだが、実際に回すのとは違う。長時間回し続けてブレが出ないか、計算上の品質を維持できるか、やっぱり心配です。特に炒飯は独自開発した新規設備を入れています。計画通り動くのか、担当としてはドキドキものです。
――エビ焼売も業界を代表するビッグアイテム。改良でえびの存在感が圧倒的に良くなった。
後藤 顧客の要望に向き合った一例です。「エビシューマイ」なのに「えびが入っていない」というクレームがありました。そこで@すり身Aえびの2つのノズルで充てんすることで、えびの圧倒的な存在感を打ち出し、真ん中にえびを入れられるようになりました。これで作業性は落ちますが、全体では出荷数量も品質も高めて取り組んでいます。世界でも当社しかできない技術を開発し、製品化できたことは誇りに思います。
――円高から円安へ、業界の収益構造にはボディブローとなる。
後藤 円安と海外の人件費高騰は本当に痛い。国内工場でいかに利益をカバーするか。現場には「いまやれることをやろう」と呼びかけています。原料調達、製造工程、無駄取り、あらゆることに取り組まないと。生産現場の基本は稼働率を高める努力を常に続けること。この努力は変わりません。