この人に聞きたい:第387回
(週刊水産タイムス:13/04/15号)
大型設備投資と豊洲移転
中央魚類(株) 取締役会長 伊藤 裕康氏
(いとう・ひろやす)大日本水産会副会長、全国中央市場水産卸協会(全水卸)会長など公職多数。築地市場の豊洲新市場移転を目前に多忙極まる。昭和9年生まれ。立教大学卒。
将来に向け、避けて通れず
グループ全社が黒字
――ホウスイを連結子会社化した平成20年4月以降、マルナカグループの動きがめまぐるしい。
伊藤 随分と、大きくなっちゃいました。ホウスイが冷蔵倉庫事業、食品事業で積極的な投資を続けており、連結子会社が増えました。つい最近も玉子焼・惣菜の有力メーカー、千日総本社の事業を譲り受けたばかり。
その一方で、中央魚類も昨年は千住支社の廃止と東京北魚への事業譲渡、また船橋中央魚類の解散と船橋魚市場への事業譲渡など、再編の動きが加速しています。
――前3月期の業績見通しは良いようだ。
伊藤 ようやくといったところ。おかげさまで中央魚類、グループ会社のホウスイ、船橋魚市場、柏魚市場、千葉中央魚類、中央小揚のグループ各社とも全てが営業黒字の見込みとなりました。
前年度に打った手が意外と早く効果が出ました。営業利益が3倍に増えた会社もあれば、赤字から黒字転換した会社もあり、グループとしてもまずまずの結果を残せたと思います。新体制で動き出した船橋魚市場も黒字でスタートが切れました。
長年の取引が苦境救う
――各社とも黒字というのは気持ちがいい。とはいっても順風満帆だったわけでもないはず。特に各社とも冷凍のサケやマグロの相場下落に泣かされた年度となった。
伊藤 それは当社も他社と同じ。ただ、チリギンなどで比較的傷が浅かったのは、長年にわたって積み上げてきた出荷者との関係によるところが大きいと実感します。生産者も我々も、良い時もあれば、悪い時もある。お互いの立場、状況を理解できる関係性が築けており、それが時として商売でもプラスに働くもの。そうでなければ取引関係は長く続かないし、長く続けてきたからこそ、助けられる部分もある。
――新年度の見通しは。
伊藤 円安による輸入水産物への影響は避けられないし、消費動向も“アベノミクス”の効果はまだまだ。少なくとも我々流通業者にとっての追い風とはなっていません。そう考えると、非常に厳しい年になると受け止めざるを得ない。こうした国内外の経済情勢の中で、水産物の仕入れがどうなっていくのかも気になります。これらの逆風にどう対応していくか。これが今年、最大の課題でしょう。
――豊洲新市場への移転もいよいよ本格化する。
伊藤 土壌問題などで着工時期が延びたものの、平成27年度中の完成に向けて動き出しました。実際の引っ越し(移転)は28年度になりますが、いずれにしても、この3年間でやるべきことをやらなければならない。
有力卸3社で業務提携
――大規模な設備投資も伴う。
伊藤 市場そのもののハード面は東京都ですが、移転に伴う様々な設備投資が我々にも求められる。ホウスイは新市場に冷蔵倉庫を建設する計画があり、豊洲移転関連に限ってもマルナカグループとしてかなりの経費と投資金額。さらに、ホウスイは千葉県市川市に大規模な物流センターを建設中。敷地内に流通センターも併設することになっており、マルナカグループ全体でみると、この2〜3年は莫大な投資金額になる。
ただ、今、手を打たなければ完全に遅れてしまう。将来に向けて、まさに避けて通れない様々な課題が目の前に迫っており、そういう意味で25年度は大変な年になると思う。24年度はたまたま好業績で終わることができたが、とてもいい気になっていられないというのが正直なところです。
――中央魚類を含めた東日本の有力卸3社が業務提携する話が出ている。
伊藤 中央魚類、仙台水産、丸水札幌中央水産が共同仕入れや商品の共同開発などで業務提携します。産地と小売りの直接取引の増加に伴う市場経由率の低下などで卸売市場の取扱いが減少する中、東京、仙台、札幌を拠点とし、地域の枠を越えた調達力と販売力の強化に取り組みます。
資本提携ではなく、閉鎖的なものでもない。むしろ、これから広がっていくことを期待しています。