この人に聞きたい:第419回
(週刊冷食タイムス:13/12/03号)
業務用で新たなモノサシ捉えよ
三菱食品相談役 中野 勘治氏
市場変化 謙虚に学べ
日給連で問屋経営層に呼びかけ
三菱食品の中野勘治相談役は業務用市場について「様々な変化が急激に進んでいる。関係者は変化を謙虚に学び、市場の“ニュースタンダード”を捉えるべきだ」と提唱した。日本給食品連合会が27日開いた会合に講師として招かれ、語ったもの。日給連は中野氏に以前から講演を依頼し、この日実現した。
講演タイトルは「過去の常識が通用しない時代〜バリューチェーンとニュースタンダード」。
中野氏はニチレイ時代とユキワ、RYフードサービス、菱食、三菱食品での取り組みを基に「メーカー、中間流通双方の立場を経験したものとして」、業務用について持論を語った。
この中で中野氏は「市場変化を謙虚に学べ。家庭用では変化対応の中から新時代への生き残り策を見出してきた」とし、数多くの実例と経過などを紹介しながら、聴講した日給連会員業務用卸の経営層と業務用メーカー幹部に、対応の必要性を強調した。
特に業務用市場では過去の常識に捉われている側面を指摘し「アジアと欧州にはさまれたトルコは、両勢力の動きによって価値判断基準が常に形を変えるためEU担当大臣を置いて常にスタンダードの変化をチェックしている」と紹介。「家庭用市場も業務用でもスタンダードを変えるのは、常に生活者だ」と論じ、謙虚に学んで対応すべし、と改めて関係者に求めた。
リクエ事業は完成間近
三菱食品の中野勘治相談役は講演の中で、自身が推進役として直接取り組んできた「リクエ事業」につき「完成形に近づいてきた」など次のように総括した。
「個店飲食店に酒以外の全ての食品、資材等を届けるのがリクエ事業。この市場は首都圏だけでも5兆円あるが、どこも手つかず。
取り組むには与信、配送費、在庫増等の課題があったが、与信はファクタリング会社の活用、配送コストはエリア限定、在庫はグループの豊富な資金力やIT力などで解決した。
毎年発行するカタログは9千品、毎月発行するカタログにも9000品を掲載している。今期売上げは85億円、来期は100億円も見えてきた。事業開始から9年。自前のノウハウ蓄積と取り組みでずいぶん苦労もしたが、ようやく存在感を示す利益も取れてきた。この間の経費は40億円以上。
物流は“ハイヤーで運んでいる”と言われるほどコスト高だったが、いまや1台で1日60軒、1回の停車で10軒前後の顧客に商品を届けるようになった。
リクエ事業の本当のねらいは、ここで得たデータを活用する“リンクマート”。このデータは全て実データであり、メーカーにもフィードバックしている。朝4時までに受注すれば当日配達する。この物流機能、サービス機能と、集積したデータこそがリクエ事業のポイントであり、他では決してまねできない。これまでの取り組みでリクエ事業は完成形に近づいている。私は業界を去る日が近づいているが、後輩にきちんと受け継いでもらい、完成度をより高める。
いずれはうまいもの、うまい店情報とリンクさせた“リクエグルメ事業”のようなものに発展させたいという夢もある。
リクエはメガ卸と外食個店が直接つながった、新しい世界をつくる夢のある事業だ」。