この人に聞きたい:第425回
(週刊冷食タイムス:14/01/21号)
見直される食品防御
一般財団法人日本冷凍食品検査協会 理事長 前田 重春氏
(まえだ・しげはる)北海道大学卒後、昭和48年同協会へ。仙台検査所長、福岡検査所長を経て、平成9年理事総務部長。19年から現職。昭和24年5月17日生まれ。趣味は釣り。
記録による実証がポイント
一般財団法人日本冷凍食品検査協会は、検査業務の他、フードセーフティやフードディフェンスまで幅広いコンサルティング業務も担う。前田理事長に、卑劣で罪深い食品テロから企業を守る対応手段を聞いた。
――昨年末から報じられている一部冷凍食品に農薬が混入した問題について。
前田 まだ問題が解決しておらず、犯人や犯行の目的が明らかになっていない以上、この問題についてコメントする訳にはいきません。
――では、食品テロという観点で話を聞きたい。
前田 食品テロと食品衛生の問題を混同してはいけません。いわゆるフードセーフティは予測し得る危険や事故に対する予防策であり、食品への意図的な異物混入など「食品テロ」を防止する取り組みが食品防御、フードディフェンスです。いかに衛生管理、生産管理に優れている工場であっても、食品テロのターゲットになる可能性はゼロではありません。
――天洋食品事件(餃子事件)以降、食品防御の考え方が注目された。
前田 そうですね。ただ咽喉元過ぎれば……で、欧米と比べて日本ではまだまだ定着しているとは言えません。今回の問題は、決して他人事ではないという認識を深めていくべきでしょう。生産工場だけではなく、保管(倉庫)、流通段階を含め、セキュリティーを見直すことが必要。
――フードディフェンスをもう少し具体的に。
前田 事故や事件が発生した時に備え、自分たちが意図して行ったことではない、という証明が必要になります。あらゆる段階で、決められた手順を間違いなく実施していた、という実証が求められます。言葉だけではなく、防犯カメラの記録などによる具体的なものです。
――そこまで求められる?
前田 日本国内はともかくとして、日本から海外に輸出する場合などに、フードディフェンスが問われる可能性は大きいですね。
――皮肉にも、その点は中国の方が進んでいる。
前田 試し刷りした包装を廃棄する際、悪意のある第三者の手に渡らないよう裁断処理したり、これまでの性善説を改め、性悪説で対処する必要性もあります。