冷凍食品(冷食)・冷凍野菜・お弁当の売上・取扱ランキング・ニュース

水産タイムズ社
トップページお問い合わせサイトマップ
業界交差点

この人に聞きたい:第468回
(週刊冷食タイムス:14/11/25号)

冷食タイムス創刊45周年に当たり

水産タイムズ社 代表取締役社長  越川 宏昭

 

安売り構造から脱却を価格よりも価値で競う業界に

 冷凍食品の発展とともに歩んだ本紙「冷食タイムス」が創刊45周年を迎えた。冷凍食品産業は昭和44年12万t強の時代から45年後の平成25年の生産高155万tへと大きく成長した。今や我が国の食生活に欠かすことのできない存在となった冷凍食品。これからも成長し続け、大きな市場を形成するためには従来にも増して消費者の厳しい要請に応えていかねばならない。自らの首を絞めるような安売り競争から脱皮して商品の独自性と品質で差別化競争をすべきだ。消費者が求める美味しく便利、栄養に優れ、安全安心な冷凍食品という評価を不動なものにしなければならない。

 周知のように一般社団法人日本冷凍食品協会は本年をもって45周年を迎え、5月の定時総会において長年協会活動に協力し、業界発展に寄与した功績者の表彰を行った。期を同じくして「冷食タイムス」紙も本年45周年を迎えた。

 創刊当時はどういう時代背景だったのか。昭和39年に東京五輪、45年には大阪万博と国家的な大型プロジェクトが相次ぎ開催された。まさに日本経済はのぼり調子の真っただ中、国民は「消費は美徳」とばかりに豊かさを追い求めた時代である。

 国民の生活水準が改善される中、冷凍食品は家庭用、業務用ともに急速な普及を遂げていく。

 弊社では30年代後半から本紙「水産タイムス」の一角に「冷食コーナー」を設け、成長する冷凍食品の関連情報を掲載してきたが、冷凍食品の需要が大きく膨らみ、日本冷凍食品協会が設立されたのを機に「冷食タイムス」(当初は日刊)を発刊したのである。

 以来、45年間、冷凍食品産業はめざましい変化と成長を遂げた。

 昭和44年の生産高は12.3万t、20年後の平成元年には95万tと8倍近い規模に成長した。さらに平成20年には147万tと5割増に。しかも海外生産の増加があって消費高は大きく膨らんだ。

 食品産業界の奇跡ともいえるこの急成長はどうして実現したのか。

 筆者の好きな言葉に「成功は一分の霊感と九分の流汗による」がある。成功とは、多少の霊感と何よりも血の滲むような努力の賜物である、といった意味。

 まさに冷凍食品産業の今日があるのは、コールドチェーンの整備構築、市場変化に対応した新商品の開発、そして高度化する品質・衛生面の対応といった諸問題を克服してきた先達の汗と工夫の成果である。

 エポックメイキングなことを挙げるならば、@麺、米飯など新カテゴリーの開発A電子レンジの普及と対応商品の開発B技術開発に伴う自然解凍品の登場C度重なる事故・事件を乗り越えて獲得した冷凍食品の安全安心への信頼等々。いずれも業界人のたゆまぬ努力の成果だといっていい。

 業界にとって長年の課題であった安売り問題がここにきて大きく変化しそうである。「全品半額」という否応なしの安売りに終止符が打たれる。念願の一事が解消するのはご同慶の至りだが、さりとて手放しでは喜べない。

 全品半額セールに馴れた消費者がエブリデイロープライス(EDLP)に順応できるのかどうか。

 これまで全品半額セールを実施した店は売上げの80%以上を特売によりあげていたと言われる。これをやめたときに、消費行動における反動がありはしないか。

 それでなくても諸物価高騰の折柄、冷凍食品も価格改定の狭間に立たされている。家庭用、業務用ともに早期の値上げを実施しないとメーカーの事業収支は悪化する一方である。原料価格の高騰に打ち続く為替の円安が追い打ちをかける。

 値上げしても売れ続けるかどうかは、1にも2にも「コストパフォーマンス」次第である。消費者を納得させる商品価値が提供できるか否か、これまで以上に商品の機能、品質を磨きあげ、あらゆるコストを圧縮して顧客満足を得ていかねばならない。

 同類商品の安売り競争など行っている余地はもはやない。コロッケやハンバーグなど徒(いたずら)な価格競争に走らずに品質で差別化して、価格でなく品質で競い合う業界にすべきである。

 コスト削減は業界共通の課題だが、物流面の無駄を省くためには競合から協調へとかじ取りをして共同配送を増やすことが不可欠であろう。それでなくても配送車のドライバー不足、コストアップが問題化している。列車や海上輸送へのモーダルシフトも推進したい。

 一人のドライバーが遠距離輸送を一人で運行するという従来の方式から、中間地点までの折り返し運転にする。残り半分は別のドライバーが反復運行するといった合理的な方法が始まっている。

 さらに物流面の課題については国家的な見地から合理化策を講じようと、自民党議員による「物流倉庫振興推進議員連盟」が発足したばかりだ。

 2020年に東京五輪が開催される。先の東京五輪が冷凍食品産業の大きな成長への起点となったことを考えあわせ、国民の健全な食生活に貢献する食品として広く認められる存在でありたい。そして、5年後の本紙創刊50周年に向けて更なる産業発展を願いたい。

水産タイムス 冷食タイムス
(C) Copyright 2004-2015, Suisan Times Co., Ltd. All Rights Reserved.
当サイトに掲載されている記事・写真の無断転載を禁じます。  お問い合わせ |サイトマップ著作権・記事使用・リンク・個人情報の保護などについて>>