この人に聞きたい:第482回
(週刊水産タイムス:15/03/09号)
首都圏の「食」未来支える
東京団地冷蔵(株) 代表取締役社長 松本 義明氏
(まつもと・よしあき)昭和29年2月生まれ。ニチレイ中部低温物流支社長、同執行役員関東低温物流支社長、ニチレイロジグループ本社取締役常務執行役員、同専務、同副社長を歴任し、平成26年6月から現職。早大商卒。
15万t全面建替え、平成の一大工事に
首都圏4000万人の台所機能を果たしている東京団地冷蔵(東京・平和島)。その再整備計画がいよいよ、この4月から実行に移される。現有地での全面建て替えで総工費は実に350億円。まさに冷蔵倉庫業界における“平成の一大工事”といえそう。完成は2018年(平成30年)2月末の予定。
――経年化(老朽化)に伴う建て替えとなるが、そもそも設立の背景は。
松本 昭和30年代後半は急速な経済発展に伴い、都市部に物流機能と人口が過度に集中。この過密都市対策の一環として流通団地を形成し、新しい食の流通秩序を確立するため、東京団地冷蔵が建設されました。
昭和42年に会社設立。46年に冷蔵倉庫4棟(5万4400t)、49年1月に4棟(6万5300t)、そして51年に1棟(2万8140t)と、3期にわたる建設を経て、現在の規模となりました。この間、輸入冷蔵貨物の一大集積地、食品流通の重要拠点として役割を果たしてきました。
――貨物の形態もかなり変わってきた。
松本 今や冷凍食品は、現代の食文化において必要不可欠の存在です。その形態もニーズに応じて原料から加工製品まで多種多様化しています。また、輸入品も同様に原材料から加工製品まで幅広くあり、物流サービス分野でも様々な対応が求められています。
さらにトレーサビリティーの確立や品質管理の徹底など、食の安心・安全に対する関心も非常に高まっています。
――特に平和島は立地条件に恵まれている。
松本 日本最大のスーパー中枢港湾である東京港に近く、また充実する首都圏の広域幹線道路網の要衝に立地していますから、首都圏の食生活を低温物流分野で支援する一大食品物流拠点として、その役割がますます重要になることは間違いありません。
しかし、1期棟竣工から44年が経過し、施設老朽化をはじめ、耐震性や物流機能面の課題を抱えています。二酸化炭素の排出量や2020年の代替フロン冷媒生産中止といった環境保全対策の必要性も高まっています。
こうしたことから再整備に踏み切ることになったわけですが、これにより耐震面や環境面への対応はもちろん、様々な顧客ニーズや食の安全安心に応える物流機能を具備した施設を目指すとともに、集積施設の利を生かした物流の効率化を実現していきます。
――新しい東京団地冷蔵の規模は。
松本 現在は9棟からなり、保管能力は計14万7840tですが、これを2棟に集約した上で17万6000tに庫腹を増やします。テナント様は14社。A棟10社、B棟4社ともに決まっています。
保管能力は約3万t増えますが、2棟にまとめることで利便性や機能性が向上します。とりわけ12万9000tのA棟は我が国最大規模の冷蔵倉庫となります。
――渋滞の解消にもつながる。
松本 京浜運河と東京モノレールの橋脚に挟まれた東京団地冷蔵の敷地は、区道の動線が環状7号線に抜けられず、袋小路となっており、モノレール側の公道に待機車両があふれ、渋滞を引き起こしています。1日当たりの通過車両は通常時で1000台。これが期変わりになると1200台、年末や盆は1500台になります。
新施設では敷地内に待機車両スペースを配置でき、モノレール側の公道にあふれる車両が削減できます。長屋方式のレイアウトで貨物のテナント間移動がしやすく、共同配送も可能になります。
――建物の特徴は。
松本 全ての点において現在、考えられる最先端の技術を採用しています。免震構造の採用、環境配慮型物流センターとして自然冷媒(脱フロン)冷却設備や低炭素仕様(LED照明、パレットリフターなど)が特色です。食の安心安全に向け、フードディフェンスなどのセキュリティーも強化します。
――完成が待ち遠しい。
松本 工事期間中は、テナント各社様にも大変ご迷惑をおかけすることとなり、心苦しい限りですが、こうした事情にご理解をいただいております。完成後は、首都圏の低温物流を担う新たな流通拠点として理想の環境を実現してまいります。