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この人に聞きたい:第489回
(週刊水産タイムス:15/04/27号)

沖縄をハブに「一貫保冷・小口物流」

ヤマト運輸(株) グローバル事業推進部係長  下簗 亮一氏

(しもやな・りょういち)平成17年4月入社。国内外の宅急便ネットーワークを活用した国際間輸送スキームの構築や、それを踏まえた日本の農水産品輸送強化に取り組む。今年4月から現職。

国産水産品をアジアへ「国際コールドチェーン」

 ヤマト運輸がアジアのコールドチェーン構築「国際クール宅急便の戦略」に取り組んでいる。沖縄を国際物流のハブ拠点にし、現地ユーザーに日本の新鮮な水産物を届けるネットワーク事業。日本から送って最短翌日に着く。仕組みと構想を同社グローバル事業推進部係長の下簗亮一氏に聞いた。

 ――政府は2020年に農水産物・食品の輸出額1兆円(2014年実績で6117億円)を掲げている。
 下簗 ヤマトグループの取り組みを通し、日本の農水産品の輸出拡大につなげたい。現在、ヤマトグループの海外現地法人は17社(21カ国)。「宅急便」事業は海外の5エリア(上海、台湾、香港、マレーシア、シンガポール)で展開している。海外においても物流品質で日本のヤマト運輸のサービスレベルにこだわり、世界初の「一貫保冷・国際小口物流」のネットワーク構築をめざす。

 ――ポイントは何か。
 下簗 これまでのサプライチェーンの構築から、デマンドチェーン(消費者視点)による付加価値の高い新たなサービスの提供と考え方。

 「和食」の無形文化遺産登録など、海外における日本産品へのニーズの高まりや、日本食レストランの海外での増加など、輸出を拡大できる可能性は高い。

 ――そのためには何が必要か。
 下簗 「物流」と「商流」の高度化が欠かせない。ただ個々の事業者による取り組みでは限界がある。物流面では地方や小口に特化したコールドチェーンを構築するとともに、「商談から事業立ち上げ、代金回収まで」を当社がトータルにサポートする体制を整えている。

 ――なぜ、沖縄を物流のハブとするのか。
 下簗 日本地図で見れば沖縄は端っこだが、アジア20億人の巨大マーケットの中心に位置する。那覇空港を基点に日本とアジアの主要都市を結ぶ深夜貨物便ネットワーク(ANA)があり、24時間運用の高機能空港。

 ――国際的に地の利がいいということ。
 下簗 沖縄県が空港隣接物流特区内にロジスティクスセンターの整備を進めており、ヤマトグループがアジア展開の拠点となる国際ロジスティクスセンター(ヤマトロジセンター)として活用している。ここで北海道の魚と長崎の魚を一緒にアジアの各地に送ることもできる。

 ――「国際クール宅急便」については水産業界でも関心が高い。
 下簗 世界初の取り組みとして当社が香港や台湾向けにスタートさせた。日本の生産地と直結し、圧倒的なリードタイム短縮と万全の保冷技術で販路拡大をサポートする。

 夕方から深夜にかけて羽田もしくは地方空港を出発した航空保冷コンテナは、深夜のうちに沖縄空港に到着。保冷・通関・検疫を経て早朝には香港空港、その後、香港ヤマト運輸に着く。そこからユーザーや飲食店に向かう。この間の温度管理は一貫保冷輸送(冷蔵・冷凍)システムで徹底されている。

 日本や香港域内の集配では、保冷車両・台車・可動式クールBOXを、全国から沖縄、沖縄から香港までは航空保冷コンテナを使用する。日本各地の特産品(生鮮食品など)を、品質を維持したまま翌日には香港や台湾にお届けできる。

 ――物流面での取り組みに加え、商流面の構築に向けては。
 下簗 「ヤフー香港」とタイアップし、ヤフーを活用した「お取り寄せ」事業を進めている。一連の業務をヤマトグループで全面的にサポートし、生産者の皆様はモノづくりに専念していただける。これまで農水産品関連では約300品目の輸出実績があり、水産品ではクルマエビ、タイ、アワビ、ホタテ、ウニ、ブリなどの輸出を実施した。消費者の日本産品へのニーズは「安全・安心・おいしい」から「四季を味わう」に変化してきている。ヤフー香港を通して日本の中小農水産生産者が海外展開を図っている例も出ている。

 ――岩手県漁連(大井誠治会長)が14日、秋サケ加工品をヤマト運輸で香港に送った。
 下簗 「ヤフー香港」を通した岩手県産サケの販売事例。甘塩、粕漬、西京漬などを1箱に詰めた「鮭三昧(さけざんまい)」(10切れ入り)で6500円(日本円換算)。農林中央金庫が中国語リーフレット作製で助成した。今後、香港の日本料理店などで利用されるものと期待している。

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