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この人に聞きたい:第490回
(週刊水産タイムス:15/05/11号)

子会社の川崎丸魚を合併

横浜丸魚(株) 代表取締役社長  岩瀬 一雄氏

(いわせ・いちお)昭和23年4月7日生まれ。横浜銀行で米国勤務、横須賀支店長などを務め、平成13年横浜振興社長から17年に横浜丸魚グループへ。19年から社長。横浜市立大卒。

新体制で最大の課題に挑む

改革は9合目、最終形へ

 4月1日付で川崎丸魚を吸収合併し、新体制となった横浜丸魚(横浜市)。既に100%子会社であったため、連結決算での直接的な影響はないが、丸魚グループの将来ビジョンを展望する時、今回の合併が持つ意味合いは決して小さくない。岩瀬社長に今後の方針を聞いた。

 ――新体制から1カ月が過ぎ、滑り出しはどうか。
 岩瀬 いい感じでスタートできた。川崎丸魚の解散とともに南部市場の本場統合も重なり、それに伴う人事異動もあった。丸魚グループの役職員一人ひとりが清新な気持ちで新年度を迎えることができたと思う。事業面でも新たな予算でスタートし、4月は計画に沿った数字で推移している。

 ――川崎丸魚の合併に踏み切った理由は。
 岩瀬 元々、川崎丸魚としても株式上場を目指していた。ただ、市場間競争の激化や市場外流通との競争などで市場経由率が低下。グループ全体の新たな成長戦略を描く中、川崎丸魚を100%子会社化(平成25年10月1日)した段階で、構想は視野に入っていた。

 横浜市場と川崎市場での水産物卸売事業を統合することでグループ経営における効率性・機動性を高める。

グループ内で積極的に人事交流

 集荷販売力と収益力を強化し、新たな企業価値の向上を図るのが狙い。将来を見据えた時に、適切な選択であると思うし、グループ内にも、そうした意識は浸透している。

 ――これを機に、制服を一新したが、新たな体制になって変わった点は。
 岩瀬 これまでは横浜本場、横浜南部市場、川崎丸魚の人事交流がほとんどなかったが、今後は子会社のハンスイなども含め、人事異動も積極的に行っていきたい。本場で培った経験や魚に関する知識はハンスイでの販売事業で必ず役立つと思うし、逆にハンスイ時代に受け止めた末端ユーザーの声は本場での業務にも大いに参考になる。

 南部での仕事を本場で生かし、川崎でのお客様を本場でも対応する。事業の質の向上とともに、取引先の幅も間違いなく広がっていくはず。

 左遷でも栄転でもない。ハンスイは外に打って出ていくタイプの仕事。それを受けて本社の仕事もある。ハンスイの社員には「将来はハンスイが親会社になるつもりで張り切ってほしい」と言っている。

整理すべきは整理、すっきりした形で

 ――前3月期は川崎丸魚の貸倒引当金積み増しがあり、業績予想を下方修正することになったが。
 岩瀬 債権回収の遅れで1億2000万円の貸倒引当金の積み増しがあった。現実として厳しく受け止めなければならない。一方で川崎丸魚の吸収合併に伴う「抱合せ株式消滅差益」として3億1300万円を特別利益に計上した。いずれにしても、整理すべきは整理し、すっきりした形で新年度を迎えたかった。

 ――今後は吸収合併の効果が期待できそうだが、逆に注意すべき点は。
 岩瀬 100%子会社といっても、あくまで別会社だった。地域性や顧客層は当然として、慣習の微妙な違いもある。抽象的な言い方だが、良い所はつぶさないよう、その点は気を使っていきたい。総合力を生かしたシナジー効果の発揮に全力を注ぐ。

 4月から、会議も持ち回りで行うようにしている。そうした中で、改めて感じるのは社内の風通しが良く、明るい雰囲気。これは丸魚グループに共通している点だと思う。

改革すべき課題と真正面に向き合う

 ――社長就任からそろそろ8年。新たな経営ビジョン「Good Relationn Maruuo」をもとに、中期経営計画「MMプラン21」の策定などを通じて、様々な改革に取り組んできた印象が強い。
 岩瀬 我々が自ら掲げた企業理念や行動指針は、グループ内でかなり浸透してきたと思う。「水産物流通システム創造企業」として、社会が求める豊かな食生活に貢献し続けるというのが当社の変わらぬ経営理念。これからも安全で良質な商品と、心に感じるサービスを目指し、お客様に「満足」を提供し続けていく。

 ただ、企業である以上、利益を出し、株主に対して配当をしなくてはならない。いかに崇高な理念を掲げたとしても、壁に掲げただけでは何の価値もない。そのために改革すべき課題とは真正面から向き合ってきた。業界の常識や前例にない改革に際しては、時として内外から“異邦人”呼ばわりされるようなこともあったが(笑)、方向性は決して間違っていなかったと信じる。自分の中では(やるべきことの)9割まで実行に移せたと思う。

 ――日々の業務の中で以前と変わったことは。
 岩瀬 例えば、仕事用の携帯電話を個人から係(3〜5人)の共有にした。担当者の顔でつながっていた取引先との関係を個人から係へと広げたことで、仕事や課題に対する共有意識が生まれただけでなく、社員にとっては有給休暇の取得もしやすくなった。

 特に鮮魚の担当者は産地市場と販売先との間に入って、休みたくてもなかなか休めない現実があった。社員から「子供が家族の思い出の絵日記を書けない」と聞かされ、ショックを受けた。

 小さい子供を持つ家庭なら、夏休みに海水浴やディズニーランドに連れて行ってあげたいと思うはず。小さなことかもしれないが、会社と社員の双方へのメリットという視点から考え、実行してきた。

 ――達成9割、あと1割が残る。
 岩瀬 結論から言うと、荷主さん、仲卸業者さんが儲かり、当社も儲かる仕組みづくり、中央卸売市場の卸売会社として、そうしたビジネスモデルを確立するのが最後であり永遠の取り組みといっていい。

「振り返っての微笑」を信じて

 たとえ100万円であっても黒字でなければだめ。市場経由率の減少が続く中で、どう利益体質に変えていくことができるか。「整理」という点では、今回の川崎丸魚の吸収合併で一段落したが、この永遠かつ最大の課題はまだ「完了」していない。

 この挑戦に一定の手応えを感じることができれば、将来の丸魚グループにとって、かけがえのない大きな自信につながっていくはず。

 厳しい局面は今後も続くだろうが、皆とともに味わう「振り返っての微笑」を信じ、もう一息の思いで歯を食いしばっていく。

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