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この人に聞きたい:第547回
(週刊水産タイムス:16/07/11号)

魚に強い総合食品会社めざす

(株)極洋 代表取締役社長  今井 賢司氏

 

新たな価値を創造する企業へ

 「魚に強い総合食品会社」を目指す極洋は、6月24日の株主総会・取締役会を経て、多田久樹会長・今井賢司社長の新体制がスタートした。今井社長は仙台支社、大阪支社で支社長を務め、取締役、常務、専務を経験。水産物の相場に対する分析の確かさは業界の誰もが認める「魚のプロ」であり、新社長の下でさらなる飛躍が期待される。

 ――新社長は入社以来、地方での生活が長かったと聞く。
 今井 入社して最初に配属されたのが製造部製品開発課。今でいう商品開発ですが、その年の10月に塩釜工場に転勤になり、昭和54年に工場が閉鎖されるまで7年いました。

 当時は、朝4時に市場で買い付け、夜は10時、11時まで残業。「何のためにこれほどきつい仕事をしているのか」と思ったこともありました。仕事の厳しさを肌身で知った時期でした。

 今にして思えば、厳しい上司に恵まれたと思います。できないことの言い訳は許されず、「どうすればできるかを考えろ」と言われました。

 大阪支社でエビを担当していた時代に「相場を見る目」を養いました。当時は相場さえ当てれば相当な数量が売れました。

 先々の需給バランスをどう予想し、分析するかが重要なポイントであり、非常に勉強になりました。

 その後は広島支社に勤務、東京支社で課長になり、大阪支社で次長、仙台支社長、大阪支社長を務め、本社に来たのは9年前。在職45年のうち、36〜37年を本社以外で過ごしたことになります。

 ――本社に来てからの9年は、極洋としても大きく業容拡大した時期。
 今井 海洋フーズ、エィペックスキョクヨー、極洋フレッシュ、ジョッキなど、今のキョクヨーグループを成すM&Aが続きました。マグロの養殖事業にも本格的に参入しました。

 ――今年度は中期経営計画「バリューアップキョクヨー2018」の2年目。
 今井 食品事業と水産事業が車の両輪。今は売上げ、利益ともに水産事業セグメントの比重が大きいですが、2020年を見据え、食品事業の拡大が次期中計の大きなテーマです。食品事業を拡大することで、「水産」と「食品」の比率を同等にしたい。

 塩釜に冷凍食品の基幹工場を作ったのも家庭用冷凍食品に本格参入するためであり、この新工場を何としても成功させなければなりません。事業の幅の広がり、規模の拡大にもつながるわけで、一日も早くフル稼働の状態にもっていきます。

 ――いずれの企業においても、少子高齢化を踏まえた食品需要の減少の中、いかに成長戦略を描くかが問われている。
 今井 端的に言えば「魚に強い総合食品会社」を目指します。収益基盤の安定と変化への対応力を高めるることです。

 食品事業では、業務用食材の“だんどり上手シリーズ”や個食パックの焼魚、煮魚など、魚由来の製品の販売を強化します。寿司ネタなど生食用の水産冷凍食品も堅調に推移しており、さらに伸ばしていきます。

 もう一つは海外市場への挑戦。昨年5月に米国ロサンゼルスに営業所を開設しましたが、当初の計画を上回る販売実績を上げるなど、順調に推移しています。新たな営業所も検討しており、まずは米国から事業基盤を確立させていきます。

 また、米国と同時並行で東南アジアも進めます。東南アジアはこれまで、どちらかといえば生産拠点としての位置付けでしたが、これからは販売拠点として見ていきます。

 海外売上高は現状の8%を2020年に15%を目指しています。

 ――鰹・鮪事業も極洋の持ち味であり、大きな柱の一つだが。
 今井 漁獲、養殖、国内外における買付けから加工、販売まで一貫した体制を確立しているのが当社の強みです。

 ただ、まき網事業は入漁料が高騰し、採算を合わせにくい状況にあります。日本は資源管理の上から操業隻数を制限していますが、東南アジアや欧州は相当な隻数が操業。最近は、採算悪化により操業を見合わせる船もあり、業界全体としては厳しい環境下にあります。

 こうした中で当社は、高鮮度のPSカツオをはじめ、混獲したキハダを使った品質の良いネギトロ製品を生産。付加価値の高さで差別化を図り、事業の優位性を保っています。

 鰹・鮪事業を取り巻く環境は厳しいですが、キョクヨーの強みを生かしながら、事業をより強化していきたい。

 今年に入り、鹿児島の指宿にカツオタタキ新工場が稼働しました。ネギトロ製品を含め増産を図っていきます。

 ――マグロの完全養殖にも注目されている。
 今井 順調に成長しており、来年度には出荷の運びです。技術・研究の積み重ねが歩留まりの向上につながっています。安定供給体制を構築するための取り組みを強化していきます。

 ――家庭用冷凍食品に本格参入しての手応えは。
 今井 おかげさまで、ほぼ計画通りに進んでいます。「香ばしえび旨フライ」というヒット商品も誕生し、幸先がいいと感じています。

 ただ、本当の戦いはこれから。「魚」にこだわったキョクヨーらしい製品で、第二、第三のヒット商品を生み出していきます。

 ――市販用の新ブランド「シーマルシェ」の浸透状況は。
 今井 こだわりを大切にしたブランド、ストーリー性のある製品として、時間をかけてもきちっと育てていきます。何にこだわって作ったのか、どういう原料にこだわったのかを明確にし、前面に出すことが大切です。

 売上げを追うあまり、ブランドを乱発するようなことはしたくありません。大切なブランドであり、「シーマルシェはおいしい」というイメージをしっかりと定着させていくことを目標に、今後も取り組んでいきます。

 これからの極洋は、原料から最終製品まで全てにかかわっていくことになります。取引先との共同開発、お客様とのつながりの中で、新たな仕事を着実に増やしていきたいと考えています。

 ――ここ数年、売上げを伸ばしてきた。業績をどう自己評価するか。
 今井 水産原料価格の高止まりが続くなかで、何とか踏ん張っているという状況です。厳しい事業環境の中で健闘していると思いますが、問題は利益。売上げが伸び続け、取扱い数量で一番になっても、利益を残せなければ意味がありません。事業基盤、収益基盤を安定させることに最大の力を注ぎます。

 ――社長としての抱負は。
 今井 当面は食品事業、海外事業の拡大が大きなテーマ。ほかにもやりたいこと、やらなければならないことは沢山ありますが、特にこの2つに力を入れていきます。スピード感をもって取り組むことが重要です。

 また、収益を上げることは当然ですが、それと同じくらい大切なのが後継者を育てること。若返りも図っていきたい。

 社員とのコミュニケーションをもっと密にし、明るく働きがいのある会社にしたいと考えています。各部の部長とは事業の進め方について、形式にこだわらない懇談の機会を設けようと思っています。現場サイドから生まれたアイデアを大切にしたいですね。

 ――最後に一言。
 今井 いずれにしても大変な重責であることは確か。

 これまでは「所詮、自分は自分」とあるがままに生きてきました。でも、これからは、さすがに今までのような「あるがままに」というわけにもいかないでしょう。(笑)

 「新たな価値を創造する新たなキョクヨー」を目指し、より一層努力を積み重ねていきたいと思います。

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