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この人に聞きたい:第581回
(週刊水産タイムス:17/03/20号)

能登の多様な食文化が武器

(株)スギヨ 代表取締役 社長執行役員  杉野 哲也氏

(すぎの・てつや)1952年生まれ。75年成蹊大学工学部卒業後、76年スギヨに入社。取締役、専務取締役を経て、88年から現職。スギヨUSAや高浜、マルタ食品などの会長も兼任する。

今期の売上高過去最高見込む

 「香り箱」「ビタミンちくわ」などで知られるスギヨ(石川県七尾市)は、子会社の高浜(塩釜)の敷地内に新工場を建設中で、カニカマ増産に向けた準備を進めている。輸出も含めて、カニカマ製品の販売を強化していく考えだ。

 ――平成29年6月期業績の見通し。
 杉野社長 スギヨ単体の売上高は右肩上がりで伸びており、今期は前期比3%増の206億円と過去最高となる見通し。増収の要因は輸出が好調であることと、カニカマ製品の販売が好調であること。連結ベースでは、昨年10月のマルタ食品(新潟市)の子会社化などにより、売上高は300億円を超える見込み。

 ――かまぼこメーカーとしてのスギヨの強みは。
 杉野社長 当社の強みは、能登半島のへき地に本社を構えていること。物流、交通面ではハンディキャップだが、能登の多様な食文化が当社の武器になっている。

 波の穏やかな内浦(富山湾側)では定置網で獲れる魚介を食す“生食文化”が発達。一方、波の荒い外浦(日本海側)では、保存性の高い発酵食品や乾物などの文化が発達した。小さな半島の中で多様な食文化が点在している。

 それらの食文化を掘り起こすだけでも商品開発につながる。当社の売れ筋商品は、能登で培われた感性の中で作られた商品が多く、他社との差別化を可能にしている。能登にいることが、まさに当社のアイデンティティーであり、将来にわたって存続していくための武器と言える。

 ――スギヨグループとして、どのような企業をめざすか。
 杉野社長 グループ年商のうち、ねり製品以外の売上高は4割程度。今後はねり製品以外の比率を高めていく方針。

 ねり製品事業をコアに置きながら、その他の水産加工事業や農産事業(スギヨファーム、2012年設立)を育て、3本柱となるような事業構成にしたい。

 ――子会社の高浜(塩釜)の敷地内にカニカマ工場を現在建設している。
 杉野社長 新工場(延床面積1700u)は12月に完成し、来年1月から稼働する予定。

 カニカマ製品の販売強化と生産面のリスク分散がねらい。東北復興への一助になれればとの思いもある。“高浜”をより一層、東北で支持されるブランドにしたい。

 投資額は約14億円。新工場稼働により、高浜の年商を現在の約30億円から40億円に拡大し、将来的には50億円規模の会社にしたい。

 ――子会社化したマルタ食品について。
 杉野社長 水産珍味メーカーとして知られるが、もともとは味噌や醤油の製造メーカーで、生産設備や製造技術を持つ会社。それらの技術を生かし、“和”をコンセプトにした海外向け商品なども今後開発したい。

 ――かまぼこの輸出について。
 杉野社長 現在は中国(香港、台湾を含む)や東南アジアなどへカニカマ製品中心に輸出している。市場性は非常に大きく、輸出事業に期待もしているが、為替リスクなどを考え、上限を定めて慎重に進めている。

 米国子会社スギヨUSA(1986年設立)のカニカマ生産量も増えている。米国での販売に加え、中国や南米へも輸出している。

 欧州からの高品質のカニカマに対する引き合いが非常に強いため、米国工場から欧州への輸出を開始する予定。

 ――社会貢献や地域貢献活動について。
 杉野社長 社会貢献、地域貢献の意味で、雇用確保はとても重要。雇用を創出することで、七尾市の定住者を増やすことができる。

 長時間労働の問題や人手不足などは深刻で、食品メーカーとしては“生産しづらい環境”に直面しているが、前向きにとらえている。社内に「働き方改革委員会」を設置し、社員一人ひとりの働き方改革に取り組んでいる。それと並行し、IoTやAI(人工知能)などの技術を積極的に取り入れて、人に優しく、効率的な会社にしていきたい。

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