この人に聞きたい:第597回
(週刊冷食タイムス:17/07/18号)
とがった商品がヒット
日本水産(株) 常務執行役員(食品事業執行) 浜田 晋吾氏
(はまだ・しんご)1983年東京大学大学院(修士)卒、日本水産入社。95年八王子総合工場の冷食工場長。08年同総合工場長。10年ハチカン副社長、11年山東山孚日水総経理。16年食品事業副執行。1959年1月生まれ、58歳。
技術資産の応用がカギ
社長に就いた大木伸介食品事業執行に代わり6月28日付で同職務に。これまでの生産畑から営業畑に移り「新鮮ですね」と意欲を見せる。
――今までと違う?
浜田 違いますね。生産や開発の経験が長いので、それを販売部隊に生かせますし、それを求められていると思っています。
――これまでで印象的な事は?
浜田 一つは、子会社の調味料会社、共和テクノス(平成20年日本水産に吸収合併)で初めて工場勤務した時の経験です。20〜30人の会社で開発は私一人、営業も一人。その2人でえびのエキスを売り歩いていました。時にはマレーシアの日系会社に飛び込みで売りました。自分で作り自分で売る手応えがありました。
――二つ目は?
浜田 ハチカンに副社長として赴任した時です。数億円の赤字だったのを1年で単月黒字、2年で通年黒字にしろと当時の細見専務に命じられました。初年度に3カ月間黒字となり、いよいよ通年黒字が見えた時に東日本大震災で稼ぎ頭の久慈工場が被災した。震災直後の大変な時期の社員に無理を承知で頼み、泥だらけの中から使える機械を洗浄して本社工場に搬入し、何とか連休明け5日後くらいから再開できた。あれで社員が一丸になり、翌年は黒字会社になりました。
――もうひとつは?
浜田 2012年に中国の山東山孚日水有限公司の総経理に出向した時は、デモ隊が当社も襲いました。しかし現地幹部社員の協力もあり1カ月で復旧できました。
――食品事業は稼ぎ頭になっている。どこが良かった?
浜田 為替の影響もありますが、一つは冷食。家庭用も業務用も好調で、特に新しい技術を採用した、いわゆる尖った商品が良かった。昨年春の新商品だと「かにかまの磯辺揚げ」。新技術でカニ肉の繊維感を出し、食べ応えある食感にしました。クリームコロッケは油調中にパンクしないようにするとクリームを固くしなくてはならなかったのですが、それを研究で克服したらヒットしました。
――これからも技術がポイントになりそう。
浜田 将来に残す技術を考えるよう指示しています。そのために、持っている技術をシーズとして応用できないかを検討する「技術型開発会議」があります。また、10年後の当社はどんな商品を売るのかを新しい発想起点で提案する未来創造型プロジェクトもあります。プロジェクトチームは専任が2名ですが、兼任メンバーも含め20名くらいが携わっています。