この人に聞きたい:第645回
(週刊冷食タイムス:18/07/10号)
物流はコストではなく“付加価値”
(株)キユーソー流通システム 代表取締役社長 西尾 秀明氏
(にしお・ひであき)キユーピー広域営業本部長、キユーソー流通システム取締役を経て2015年2月から現職。「食品業界とのご縁をこれからも大切に育んでいきたい」。1957年2月生まれ、61歳。九州産業大商学部卒。
現場改革に投資惜しまず
西尾秀明氏はKRSの第9代社長。物流現場はじめ、食品卸展示会まで精力的に歩き回る。「物流はコストではなく付加価値」と訴える。
――社長就任直後、「食品業界に長年身を投じてきたことを糧にお客様にアプローチしていく」と語っていた。
西尾 今も食品卸の展示会にできるだけ顔を出しています。出展者の大半が当社グループの直接・間接的ユーザーです。展示会で情報交換します。催しに伺うだけではなく、地方に行けば、地域卸に立ち寄ることもあります。
――物流業界に来て感じたことは。
西尾 まず現場を見て回りました。従業員は現場で懸命に働いています。ところが楽しく働ける環境が整っていないと感じました。特にトイレが気になりました。トイレがきれいだと女性にも働いてもらえます。物流業界の現場も女性が増えれば、男性も良い人材が増えると思います。
――物流業界は陽があたっていなかった。
西尾 まずはトイレをきれいにせよ、と。トイレをきれいにすると現場の雰囲気が良くなります。現場の女性からもお礼を言われました。休憩所も改善すると従業員の意欲が高まりました。今後も現場改善に投資を積極的に行う方針です。お金を使い、倍稼ぐ発想です。物流業者は社会的地位が低いと自ら卑下している人がいることも気になりました。作り手、買い手と共に、我々が担う“つなぎ手”がいてこその業界。物流の仕事は、むしろ家族に誇れるものです。
――食品物流には合理化しにくい部分が多々あるはず。
西尾 荷主の時間指定通りに到着しても待たされることがあります。あるいは1アイテムを1パレット積みで運ぶよう指示されることがあります。作り手、買い手の協力がないと不合理な部分は解決できません。これまで物流業者は不合理を辛抱するのが習い性になっていました。物流はコストではなく、付加価値です。付加価値を生み出す“つなぎ手”の大事さを広く訴えたいですね。
――人手不足や働き方改革は人手依存型の業界にとり試練では。
西尾 確かに物流業界にとって厳しい情勢ですが、私は好機と捉えています。こういう時だからこそ省人・省力化を進めなければなりません。埼玉県所沢市に来年春完成予定の当社最大の冷凍・冷蔵物流拠点「首都圏低温ロジスティクスセンター」で省人・省力化を具現化します。まさにピンチをチャンスに変えるための投資です。