この人に聞きたい:第680回
(週刊水産タイムス:19/03/25号)
子会社活用し生鮮物流網構築
築地魚市場(株) 代表取締役社長 吉田 猛氏
――豊洲へ移転し約5カ月が経過した。
吉田社長 豊洲移転による業績への予想以上の影響はないと考えています。
温度管理や物流が築地市場に比べると改善したため、量販店などへの販売が増えています。一方で、現金買いのお客さんが中心の仲卸さんなどは苦戦していると聞きます。
量販店などにとっては使いやすいですが、毎日自ら市場に買いに来る買出し人さんにとっては多少問題点があるようです。駐車場の十分な確保が必要だと思います。
――来期の重点課題は。
吉田 まずは豊洲市場内にある共同水産の加工場の稼働を伸ばすこと。今はサーモン中心に、鮮魚を加工している。現時点では目標稼働率の半分程度ですが、5月に向けて加工量はさらに増加する見込みです。
2点目は冷凍魚の取り扱いをテコ入れし、建て直すこと。特に冷凍鮭鱒やマグロなどの扱いを強化したいです。鮮魚などの扱いは順調だが、冷凍魚の扱いを増やさないと総合的な商品提案が出来ないためです。
マグロはGG(丸)だけでなく、仲卸さんと連携して加工品を増やし、販売チャネルを拡大したいです。
――4月1日付で吉田社長を委員長とする物流委員会を立ち上げる予定。
吉田 市場法も変わり、豊洲市場への移転も完了しました。今後の成長戦略として、生鮮物流機能を拡充・強化するのが最大の課題。単純に魚を売った、買っただけでは伸びがないです。
大手の食品卸なども生鮮流通に注力していますが、非常に難しく苦戦しています。生鮮物流は水産卸売会社の得意分野。そこにチャンスがあると思います。
豊洲東市冷蔵庫、共同水産、築地市川水産、キタショクなどグループ会社すべてを有機的に結合し、生鮮物流網を構築する計画です。そのためには、外部のパートナーも必要で、将来的には提携なども検討したいです。
「物流委員会」では生鮮物流網の構築に向けた戦略や投資などについて話し合う予定です。
――グループ各社の強みと今後の展開について。
吉田 築地市川水産は豊洲市場内で3番目の売上高を誇る仲卸。塩干、加工品の扱いが得意で、年商約60億円。
豊洲の共同水産はホテルなどへの食材納入を行う問屋と、加工メーカーの2つの顔を持っています。今後はメーカーの色合いを強めて、“メーカー小売”をめざします。
豊洲市場内に加工場を持つ共同水産の強みは、豊洲に入荷した魚を一歩も外に出さず、市場内で加工し納めることができるところ。チルド・冷凍のどちらの納品も可能です。
――豊洲移転前に策定した新中計「チャレンジ2020」について。
吉田 中計は今後修正する予定です。2年間開場が遅れたため、計画の見直しをせざるを得ないです。5月の通期決算発表前には中計の見直しを公表する予定です。