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この人に聞きたい:第743回
(週刊水産タイムス:20/07/06号)

遠洋漁業の灯 断じて消すな

(一社)日本トロール底魚協会  吉田 光コ会長

(よしだ・みつのり)昭和24年生まれ。東京水産大学(現東京海洋大)卒業後、日本トロール底魚協会へ。200海里後の漁船漁業の維持発展に尽力。平成6年専務、24年から会長。

 ――新型コロナウイルスの感染が一向に終息しません。遠洋漁業(トロール・まぐろはえ縄・海外まき網など)への影響は。
 吉田光コ会長 極めて深刻です。世界各国が鎖国状態にあり、アフリカ諸国や太平洋諸国など、日本以外の国の港を基地として漁業を営んでいる遠洋漁業は、各国のロックダウン(都市封鎖)や入出港制限、さらに乗組員の乗下船禁止、入国禁止などによって、一度入港すれば操業再開の目途が立たず、港に係船している状態です。

 ――身動きがとれない、といった状態ですか。
 吉田 そうです。各国の港で乗組員の乗下船が制限されているため、乗組員の交代が思うようにできない上に、漁船は港内に留め置かれたまま。事実上の休漁状態です。しかも遠洋漁業は漁場への往復、乗組員の給料など、莫大なコストがかかります。現状は操業を中断しているため、漁船の収入がありません。
 関係者の努力の結果、乗組員が下船、帰国できた場合でも、高額な費用を必要とするチャーター便によって帰国ルートを確保せざるを得ません。乗組員の帰国時や乗船前には自主的な隔離措置も必要で、そうした宿泊費などを含め、多額の経費がかかります。遠洋漁業は今、危機的な経営状況にあるということを、ぜひ知っていただきたい。

 ――操業再開が焦眉の課題ですね。
 吉田 各社の遠洋漁業運行担当者はそれぞれの国の新型コロナウイルスの対応の情報収集や、各方面への対応、対策に明け暮れています。通常、公海域を主体とした遠洋漁業の漁獲物は海外の港に陸揚げし、そこから日本や諸外国へ輸出されますが、今は各国の制限で漁獲物の陸揚げができず、漁獲物の搬送方法が確定していないというのが実情です。

 ――乗組員の健康も懸念されます。
 吉田 仮に遠洋漁船で感染者が発生した場合、致命的な問題となる恐れがあります。船員の安全確保の観点からも、乗船前の船員(日本人、外国人とも)に抗体検査やPCR検査を実施できる体制を確立しなければなりません。
 万一、船内で感染者が出た場合、逃げ場がなく、即、操業を中止し寄港せざるを得ません。初期の治療・対策が不可欠です。新型コロナウイルス感染症の予防薬や治療薬が国から承認された場合は、速やかに提供してもらえるように協会として働きかけていきます。

 ――遠洋漁業への具体的な支援策は。
 吉田 協会では休漁を余儀なくされている漁船への固定費見合いの補助を求めています。世界各地の港で乗下船規制、入国拒否などによって港内に係船、休漁を余儀なくされている漁船に対しては、国内事業者に補助される一部家賃補助に相当するような、漁船の「固定費」に見合う補助を検討してほしい。漁獲物を自主的に調整保管せざるを得ない事態も発生しています。
 コロナは世界的に長期化が懸念されます。運転資金の資金繰りについても非常に厳しい状況が予想されることから、金融支援のさらなる条件緩和や、償還猶予期限の延長など措置も求めています。

 ――水産国日本として、何としても漁船漁業を守っていかなくてはならない。
 吉田 いかなる時代においても、人間の生存に不可欠な食料問題の重要性に変わりはありません。遠洋漁業も大切な食料供給手段ですから、医療体制と同じように、崩壊は何としても避けなければなりません。
 新型コロナウイルスは、第二次世界大戦後、最大の危機です。コロナの地球規模での爆発的拡散により、世界中で人間の行動態様、社会活動、経済活動が大きく制約され、先が全く見通せない状況にあります。まして今後は南半球が本番を迎えるといわれています。
 遠洋漁業界は、今回の危機が終息し、操業が再開した暁に、安全安心な天然の漁獲物が日本をはじめ世界各国へ安定供給されることを切に願い、今の苦境と闘っています。

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