この人に聞きたい:第761回
(週刊水産タイムス:20/11/16号)
「真っ当な商売」しのぐ脅威
(株)喜代村 木村 清社長
(きむら・きよし)昭和27年4月生まれの68歳。千葉県出身。航空自衛隊員、水産会社勤務を経て昭和54年独立。マグロの初セリでは昨年、史上最高値の3億3600万円で落札した。
東京の築地場外に「すしざんまい本店」(平成13年)をオープン以後、全国に次々と店舗(現在56店舗)を拡大。「日本で一番安くてうまい、行列ができる寿司チェーン」として国内はもとより、海外観光客の圧倒的支持を得る。
――新型コロナウイルスの感染が収束しないばかりか、またも全国へと拡大。本格的な冬を前に、第3波の到来が鮮明になってしまいました。
めざすべきは「コロナ根絶」
木村 3〜4月の第1波はやむを得ないとしても、5月に緊急事態宣言による外出自粛でようやく収まりかけてきたのに、国は性急な「解除」に走った。その結果の第2波です。
海外では欧米やブラジルのように、その後も感染拡大が続いたところもありますが、ニュージーランドみたいに抑え込みに成功しだ国もある。日本ももう少し我慢していれば、状況は違っていたでしょう。
――第2波が収束しない状況の中で「GoToトラベル」「GoToイート」がスタート。都市から地方に感染が広がっています。
木村 「格安で旅行できる」「買い物クーポンがもらえる」とマスコミも一緒になって騒ぎ立ててきましたが、「おトク」といっても財源はあくまで税金。つまり自分たちのお金を使って旅行しているに過ぎない。その結果、感染が広がったのでは本末転倒と言わざるを得ません。
――これから、どうすべきと考えますか。
木村 3月の感染拡大から納得いかないのは政府やマスコミから「根絶」という言葉が出てこないこと。
早く通常の姿に戻したい気持ちはわかりますが、コロナ対策をしっかりしてほしい。せめて、PCR検査を短期間で行うべきです。
めざすは「根絶」です。「経済は回す。感染はなるべく減らしてほしい」――そんな虫のいい姿勢でコロナに立ち向かうことなどできません。
――3月以降の業績は。
木村 ここへきて、ようやく盛り返してきた感じはありますが、10月までは完全な赤字状態。「どこよりも新鮮でおいしい寿司を、どこよりも安く」が「すしざんまい」のポリシーですが、外食業界の激しい競争の中にあって、この基本に徹してきたからこそ、お客様の支持が得られ、繁盛を続けてくることができたのです。
「人に必要とされれば生きていける」「景気がいい、悪いは自分が決める」――そう言って社内を鼓舞してきました。ただ、そうした「真っ当な商売」でさえも凌駕(りょうが)してしまうのがコロナの最大の脅威といえます。
――赤字状態が続けば企業は存続できません。
木村 室内の換気を短時間で行う強力な空気清浄機を設置したのをはじめ、小まめな消毒、思い切った席の間隔など、感染対策を徹底してきました。
持ち帰りメニュー、宅配メニューも充実させました。コロナの影響で辞めた従業員は一人もいません。「地道に、着実に取り戻していくことだ。どんな状況下にあっても、決して悲観してはいけない、焦ってはいけない」と必死に社内を勇気づけています。
――天王山の年末商戦が目の前に迫っています。
年末に向けて多彩なフェア
木村 年末に向けて「冬のうまいもの市」(12月20日まで)を開催中です。「本まぐろ特選五貫にぎり」「冬の三貫」「炙り三貫」「さば棒すし」など、今が旬のメニューを特別価格で提供しています。
「すしざんまい」が丹精込めた「おせち三段重」の予約もスタートしました。私自身が素材を一品一品厳選した「極上本鮪と自家製いくら・明太子詰め合わせ」も予約受付中です。すしざんまい自慢の大とろ・中とろ・赤身と、たらこ・いくら・明太子を重箱に盛り付けました。年末年始の食卓を華やかに彩る豪華な詰め合わせです。
リーマンショックの時はそうでもありませんでしたが、バブル崩壊後はしばらく大変でした。この試練は何としても乗り越えなくてはなりませんし、必ず乗り越えてみせます。
――年始の「マグロ初セリ」も注目されます。
木村 初セリについてはノーコメント。「(値段はともかく)いいマグロを買います」とだけお答えしておきます。