この人に聞きたい:第829回
(週刊冷食タイムス:22/04/05号)
老舗卸が凍結機を開発
アクト中食(株) 代表取締役社長 平岩 由紀雄氏
(ひらいわ・ゆきお)学卒後、広島銀行を経てアクト中食入社。2005年から社長。コロナ禍で業績を落としても従業員の雇用を守り続けている。関西学院大学経済学部卒。1967年広島県生まれ、54歳。
食材の廃棄ロス削減に貢献
コロナ禍で技能実習生の入国が制限される中、新在留資格の「特定技能」に注目が集まる。外国人材の受け入れを支援するケイズビューは食品工場向けに優秀な人材を紹介している。
――アルコール凍結装置を開発したねらいは?
平岩 コロナ禍で客足が遠のいている飲食店では食材の仕入れ予測が難しくなっています。凍結装置で食材を前もって急速凍結し冷凍保管しておけば、来店に合わせて使うことができ、食材を無駄にしません。新規事業として提案し、廃棄ロス削減に貢献、SDGs推進につなげます。
――急速凍結は緩慢凍結に比べて何が違う?
平岩 鮮度保持だけでなく、ドリップを抑えておいしさ、品質を維持します。このため、自前のメニューを冷凍食品にして売り出すことも可能。実際、取引先の焼肉店は店で出しているラーメンを冷凍自販機で販売していますが、ひと月の売上げが60万〜70万円に上ります。当社の凍結装置は飲食店向けに小型化しており、電源は単相100ボルトで導入しやすい。
――テストキッチンも開設したと聞く。
平岩 居抜き物件を取得し、昨年末に川内工場(広島市)として稼働しました。1階が精肉加工場で2階がテストキッチンです。凍結装置をはじめスチコンやフライヤーなども揃えており、ここにお客様をお連れして商品開発テストを行います。
――新規事業はコロナ禍が理由?
平岩 以前から準備は進めていましたが、感染拡大後に一気に加速しました。当社もコロナ禍の影響は大きく、この2年間で大幅な減収を迫られました。
――「プロマート」(C&C)でカバーできなかった?
平岩 プロマートは飲食店の利用が多く、一般客の利用も多少増えましたが、全体で見れば売上げを減らしています。
ただ、プロマートの強みは冷食の扱いが多いことです。コロナ禍で冷食に対する負のイメージが払しょくされ、「便利」「おいしい」という意識に明らかに変わりました。そういう意味ではプロマートも新規事業も期待度は高いです。
――卸の役割をどう考える?
平岩 社会的責任や役割をシフトチェンジしていく必要があります。卸が新たな価値を創造して需要を創出し、パイを広げることが重要と考えます。当社は創業110年を迎えました。開拓者精神の志を常に持ち、新たな時代に向かって走り続けます。