この人に聞きたい:第867回
(週刊冷食タイムス:23/01/17号)
価値認められた商品は強い
ケイエス冷凍食品(株) 代表取締役社長 池内 良彰氏
(いけうち・よしあき)米国の大学卒、レディボーデンジャパンに。日本事業撤退を機にグリーンジャイアント、さらにJTフーズを経てテーブルマークで開発事業部長など。21年1月KS社長。1963年7月金沢生まれ、59歳。
課題は商品の次の柱づくり
テーブルマークから21年1月同社に転じた直後コロナに見舞われ、特に業務用を直撃。回復が見え始めた22年は原料等の高騰で苦戦。しかし打った手が徐々に効果を見せつつある。
――市場では市販用が好調を維持、業務用は回復基調が進んでいる。前12月期の概況は。
池内 前年よりは良くなりました。増収増益と見ています。コロナ前に相当近づいてきました。業務用需要は飲食店を含め着実に回復しており、市販用では主力「鶏つくね串」が堅調に動いてます。
――値上げをしている。
池内 「鶏つくね串」は値上げ後も落ちていません。価格以上に価値の点でこの商品は市場に支持されていると感じます。一方で、市販用のテーマ「食卓向け」強化に沿って投入した“中華菜皿”シリーズの肉だんご、海老のチリソースが乗り切れてません。
――食卓向けは流れだが。
池内 確かに食卓向けは需要が増えてますが、物価高、在宅から職場・学校復帰などの要因で弁当需要が再び伸びている。難しい。
――コロナ対策として新業態対応を進めたが。
池内 業務用では需要が堅調なデリカ、老健・病院、学校給食向けを強化しましたが、その効果として特に22年後半は業務用の回復に結びつき、単月ではコロナ前を上回ることもありました。値上げも業績回復につながった。市販用では伸びているEC、生協、ミールキットなどに対応準備を進めています。状況は刻々変わる。
――生産、物流対策は。
池内 泉佐野工場(大阪府)では在庫を減らして身軽になりました。工場のキャパは決まっているので、効率よく運用しないと。泉佐野工場で3年前に採用したベトナム人技能実習生がいい仕事をしてくれています。15人いますが、現場に慣れ、大きな戦力となっています。新規採用も検討中。飲食店や卸店も人手不足の問題を抱えていますが、メーカーも同様。
――23年の課題は。
池内 まず足元では値上げをしっかり進めること。これが決まらないと次の展望が描けない。もう一つは“商品の次の柱”づくり。これまでもいろんなチャレンジはしてきたが、簡単には生まれない。当社が持つ小型ミンチ加工技術を活かしたモノづくりを進めたい。「鶏つくね串」が底堅いのは他社にマネできない技術力、調達力、製品の質を備えているから。
――中長期的に見ると。
池内 次の柱づくりは長期的課題。社内体制の整備、女性社員の役員登用なども考えたい課題。