この人に聞きたい:第891回
(週刊冷食タイムス:23/07/11号)
高額品を求める声あり
(株)帝国ホテルキッチン 代表取締役社長 福本 雅志氏
(ふくもと・まさし)ニチレイフーズで取締役常務執行役員業務用事業部長。20年6月退任し、加藤直二氏の後任として帝国ホテルキッチンの社長に。前の東京五輪が開催された1964年11月兵庫県出身。同志社大学経済卒、58歳。
冷食が売上げをけん引
ニチレイFでは業務用一筋の福本氏が家庭用の帝国ホテルキッチンに転出したのがコロナど真ん中の20年6月。するとホテルの味を求めるニーズを取り込み増収。流れをつかんでいる。
――社長に就いた20年度がコロナ直撃で大変だった。
福本 巣ごもり需要は確かにありました。外に出られない、それならとホテルマーガリンや缶詰をお届けする動きが活発に。特に缶詰は保存場所にも困らないため、贈られたお宅から「これ、どこで買えるんですか」との問い合わせが、今でも毎日2〜3件以上あります。これが弾みになっています。
――では冷凍食品は?
福本 増収に一番貢献してます。スーパーの新規店で当社の冷凍食品を扱う所が増えていますし、選択肢に入ってきたようです。帝国ホテルを通じた冷凍食品の通販が非常に伸びており、中には「もっと高級(高額)にして」との声もあります。日常で帝国ホテルに行き食事できる方はまだ限定的ですが、ホテル内店舗「ガルガンチュワ」の売上げは3倍になりました。新たな顧客を呼んでいると評価があります。
――コロナで行動制限が厳しい中でも「帝国ホテル」商品はホテルの味を提供する大事なコンテンツと福本さんは語っていたが。
福本 当社商品の利用客数は減っていません。ここで満足し納得した人がホテルに来館いただき、ホテルの味を楽しんでいただくという良い循環が見られます。
――前3月期、前年並みながら0.5%減と伸び悩んだ。
福本 諸物価の著しい高騰に伴い缶詰・レトルトのギフト需要が影響を受けましたが、ホテル内ショップ「ガルガンチュワ」と、通販、一部スーパーで扱っている冷凍食品は9.7%増と好調でした。
――24年度で30億円の大台到達をめざしていたが。
福本 23年度は「新」へのチャレンジで商品、営業の両面から新たなアプローチを進め、顧客の声を聞くなど「デザイン思考」の開発・売場提案などに取り組み、仕事の質を高め、1.6%増29億5千万円、25年3月期で1.7%増の30億円到達をめざしています。これまで5年間取り組んできた「経営基盤の再構築」をベースに、これからは「新」へのチャレンジを行います。今期発売する新製品にも期待してます。
――本社事務所を来年移転する。
福本 帝国ホテルの建て替えに伴い当社も24年4月移転します。プレゼンルームなども置きます。これが事業再構築の総仕上げです。