この人に聞きたい:第894回
(週刊冷食タイムス:23/08/01号)
もう一つの柱を作りたい
シマダヤ(株) 代表取締役社長 岡田 賢二氏
(おかだ・けんじ)1993年入社、業務用冷凍麺の営業に携わる。2018年常務取締役マーケティング本部長兼商品企画部長。「健美麺」、「時計台」ブランドを立ち上げる。21年4月から早稲田ビジネススクールで1年間経営者修行。今年4月から現職。53歳。
来年度中に上場申請へ
親会社のメルコホールディングスはシマダヤの上場計画を発表している。こうした中、17年間社長を務めた木下紀夫会長の後を引き継ぐのは大変なプレッシャーに違いない。
――社長になって3カ月だ。
岡田 コロナ禍で不足していたコミュニケーションを取り戻しているところで、11工場中10工場を訪問して従業員にメッセージを伝えました。事業所の従業員とは座談会を開いたりしています。
――親会社はシマダヤの株式上場予定を明らかにしている。
岡田 24年度中の申請をめざして準備を進めています。将来的には事業ポートフォリオを見直し、収益性の高い事業を育成することも大切です。現在の家庭用チルド麺と業務用冷凍麺に加えもう一つの柱を作りたいと考えています。私は前社長のように強力なリーダーシップや豊富な経験は持っていません。自分も成長するよう努めますが、従業員が失敗を恐れず自律的に動ける組織にしたいです。
――長年業務用冷凍麺の営業をけん引してきた。
岡田 業務用冷凍麺の営業には23年間携わりました。担当を持った入社2年目は「『真打』稲庭風うどん」が新発売された年でした。新商品ならスタートラインは一緒ですし、1年ほど営業成績トップを走ることができました。また、担当卸店と協働で新規開拓を行うことで、一店ずつ積み上げることの大切さを学びました。
――成功もあれば失敗もある。
岡田 2003年、コンビニエンスストアから麺と丼のセット商品の要請がありました。それまで外食を中心に成績を伸ばしていたのですが、初めて冷凍麺がコンビニベンダーで採用されました。発売当初は凄い勢いで売れ欠品スレスレ。何とか在庫をためるよう頑張りました。ところが1週間後には需要が激減し何千万円分もの在庫を廃棄してしまいました。コンビニは需要が減るとすぐにカットされることを知りませんでした。
――大ピンチですね。
岡田 始末書を書きしばらく落ち込んでいたところ、当時の開発管掌役員から「あんな数時間経つと味が落ちる商品は出すな。シマダヤとして恥ずかしい」と言われました。それを機に翌年、長時間おいしさを維持する中食向けの「α麺」を発売開始。それを徹底的に売ることがお詫びという気持ちで取り組み、業務用では珍しく初年度から半期売上げ1億円超えの商材になりました。
――「α麺」は今や柱商品の一つ。
岡田 失敗で人を潰すような会社ではなく、チャンスをもらえたことは本当に感謝しています。