この人に聞きたい:第902回
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自社の各ブランドで商品を展開している |
昨年秋から小売各社がイオンを中心としたトップ企業をベンチマークして冷凍食品売場に導入を開始した「外食の味」のコーナーは、5類移行後から同社を含め外食チェーン全体で鈍化し始めたと奥井氏は分析する。
外食商品は付加価値商品が多く、一般のNBメーカー品と比べると高い価格帯で展開している。コロナ禍ではその付加価値を消費者が「ごちそう」と捉えて使用するシーンが多かったが、現在はイートインに回帰している。ただし同社では外食企業他社と比べると価格帯を下げて設定しているためそれほど影響はなかった。問屋サイドからも「物価高で単価の安い商品にシフトしている」と声が上がっている。
ECではクール宅急便の送料がかかることからバーミヤンの「本格生餃子」やガストの「チーズinハンバーグ」などを複数購入する動き、様々な商品を詰め合わせたアソートセットを買い求める動きが見られた。5類移行後、ECモールの楽天市場ではスーパーセール期間で割引率の高い商品の注文が多く、それ以外の期間は動きが少ないというように消費行動にメリハリが現れてきている。
冷食でブランドの認知を進める
イートインが戻りつつあるものの、展開先や売上げ規模がイートインより大きいスーパー、ドラッグストア、生協での冷凍食品の外販を通じてグループ店舗のないエリアでもブランドの認知を得る方針。まず冷凍食品を食べてもらい、そのおいしさから実際の店舗への来店を促す。
一方で「外食の味」のコーナー化は右肩下がりであることから、カテゴリー陳列でも売上げを取れるような商品を育てることを販路拡大の鍵としている。
この秋からコーナーを廃止する小売店の一部では、同社商品のうちバーミヤンの「本格炒飯」が米飯カテゴリーへ、「本格生餃子」が餃子カテゴリーへ導入されることが決まっており、ブランドの看板商品として一定の評価を得られた。
奥井氏は「コーナーとしてリーチイン扉一枚を埋めるために販売数の少ない商品を展開することもあった。今後は当社のレストラン品質を表現しつつ、単品でも売上高が高いものを作ることが急務」と意気込みを示す。
EC出店増やす限定で贈呈用も
ECでは自社とAmazon、楽天市場のほか、このほどYahoo!ショッピングへ展開を開始した。dショップとau Payマーケットの携帯キャリア2社のモールへも出店を進める。ユーザーそれぞれのポイント経済圏内での買い回りの良さを追求するのがねらい。
通販限定で付加価値の高い贈呈用商品なども品揃えする。今夏はうなぎを試売した。年末年始向けの商品も展開することで普段使いするユーザー層とは異なる層の獲得をめざす。
本業である外食事業と合わせて原料を大量調達することで、購買するコストを低減させるとともに、品質の良さも両立できるのが強み。
米飯拡充、需要ある麺類も挑戦
最優先で注力するのはイートインでも動きが良く、冷凍食品も売れている米飯類。バリエーションの拡充を図る。
まだ品揃えしていない麺類にも挑戦する。イートインでは米飯よりも麺類の方が需要は高く、特にバーミヤンではその動きが堅調なことから重要なカテゴリーに位置付けている。まずは生協向けに具付きの担々麺を投入する。
また既存品の利便性を高めるリニューアルも実施する。今秋は家庭で油調する必要があった「から好し」ブランドの「もも唐揚げ」をレンジアップ商品にブラッシュアップした。
以前の油調していない商品に比べてすでに引き合いが何十倍にも増えているという。