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この人に聞きたい:第902回
(週刊冷食タイムス:23/10/03号)

単品の磨き上げで採用へ

株式会社すかいらーくホールディングス 購買本部HMDグループディレクター  奥井 浩司氏

 

ECはユーザー層を拡大

 すかいらーくホールディングスは2021年から冷凍食品の通販を開始し、22年から生協や小売店での外販を始めた。現在は全国の約95社にまで販路を拡げ、22年度は数量ベースの売上げが21年比で4倍程度に成長した。
 23年秋から小売各社が冷凍食品売場に設置していた「外食の味」のコーナー化の動きが鈍化したことから、今後の商品採用に向けてカテゴリー陳列に選ばれる単品の磨き上げに注力している。
 通販でもコロナの5類移行で消費動向に陰りが見え始めたことからECモールの出店拡大と共に、よりグレードの高い商品を品揃えすることでユーザー層の拡大をめざす。購買本部HMDグループの奥井浩司ディレクターに販売動向や今後の方針を聞いた。

上期は代表品好調も外食へ回帰

自社の各ブランドで商品を展開している
 23年上期の小売への外販はバーミヤンの「本格炒飯」や「本格生餃子」、ジョナサンの「メキシカンピラフ」、ガストの「チーズinハンバーグ」といったブランドを代表するシグネチャーメニューが人気商品となった。カテゴリー別では、ハンバーグより米飯の動きが良かった。また簡便性ニーズからレンジアップ商品が好調だった。
 昨年秋から小売各社がイオンを中心としたトップ企業をベンチマークして冷凍食品売場に導入を開始した「外食の味」のコーナーは、5類移行後から同社を含め外食チェーン全体で鈍化し始めたと奥井氏は分析する。
 外食商品は付加価値商品が多く、一般のNBメーカー品と比べると高い価格帯で展開している。コロナ禍ではその付加価値を消費者が「ごちそう」と捉えて使用するシーンが多かったが、現在はイートインに回帰している。ただし同社では外食企業他社と比べると価格帯を下げて設定しているためそれほど影響はなかった。問屋サイドからも「物価高で単価の安い商品にシフトしている」と声が上がっている。
 ECではクール宅急便の送料がかかることからバーミヤンの「本格生餃子」やガストの「チーズinハンバーグ」などを複数購入する動き、様々な商品を詰め合わせたアソートセットを買い求める動きが見られた。5類移行後、ECモールの楽天市場ではスーパーセール期間で割引率の高い商品の注文が多く、それ以外の期間は動きが少ないというように消費行動にメリハリが現れてきている。

冷食でブランドの認知を進める

 イートインが戻りつつあるものの、展開先や売上げ規模がイートインより大きいスーパー、ドラッグストア、生協での冷凍食品の外販を通じてグループ店舗のないエリアでもブランドの認知を得る方針。まず冷凍食品を食べてもらい、そのおいしさから実際の店舗への来店を促す。
 一方で「外食の味」のコーナー化は右肩下がりであることから、カテゴリー陳列でも売上げを取れるような商品を育てることを販路拡大の鍵としている。
 この秋からコーナーを廃止する小売店の一部では、同社商品のうちバーミヤンの「本格炒飯」が米飯カテゴリーへ、「本格生餃子」が餃子カテゴリーへ導入されることが決まっており、ブランドの看板商品として一定の評価を得られた。
 奥井氏は「コーナーとしてリーチイン扉一枚を埋めるために販売数の少ない商品を展開することもあった。今後は当社のレストラン品質を表現しつつ、単品でも売上高が高いものを作ることが急務」と意気込みを示す。

EC出店増やす限定で贈呈用も

 ECでは自社とAmazon、楽天市場のほか、このほどYahoo!ショッピングへ展開を開始した。dショップとau Payマーケットの携帯キャリア2社のモールへも出店を進める。ユーザーそれぞれのポイント経済圏内での買い回りの良さを追求するのがねらい。
 通販限定で付加価値の高い贈呈用商品なども品揃えする。今夏はうなぎを試売した。年末年始向けの商品も展開することで普段使いするユーザー層とは異なる層の獲得をめざす。
 本業である外食事業と合わせて原料を大量調達することで、購買するコストを低減させるとともに、品質の良さも両立できるのが強み。

米飯拡充、需要ある麺類も挑戦

 最優先で注力するのはイートインでも動きが良く、冷凍食品も売れている米飯類。バリエーションの拡充を図る。
 まだ品揃えしていない麺類にも挑戦する。イートインでは米飯よりも麺類の方が需要は高く、特にバーミヤンではその動きが堅調なことから重要なカテゴリーに位置付けている。まずは生協向けに具付きの担々麺を投入する。
 また既存品の利便性を高めるリニューアルも実施する。今秋は家庭で油調する必要があった「から好し」ブランドの「もも唐揚げ」をレンジアップ商品にブラッシュアップした。
 以前の油調していない商品に比べてすでに引き合いが何十倍にも増えているという。

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