この人に聞きたい:第906回
(週刊冷食タイムス:23/10/31号)
積極投資で売上げ拡大へ
守谷輸送機工業(株) 代表取締役社長 守谷 貞夫氏
(もりや・さだお)神戸製鋼勤務を経て1969年に守谷輸送機工業入社。社長室長、常務、専務を経て83年から現職。大型荷物用エレベーターのトップ企業に育てた。40年12月生まれ、82歳。神戸市出身。滋賀大学経済学部卒。
大型荷物用EVは需要旺盛
積載荷重3t以上の荷物用エレベーターでシェアトップ。市場拡大を背景に受注高・保守台数が伸び、受注残高も積み上がっている。新工場稼働や人員獲得でさらなる受注拡大を図る。
――受注残高が前3月期末で118億円に積み上がった。
守谷 受注台数の増加に加え、受注単価が上がったことが主な要因です。旺盛な需要は今後も続くとみられますが、当社の生産能力は早晩限界に達し、据付けの人員不足の問題も顕在化しています。そこで、対応を急ぐために鳥浜新工場(横浜市)を今年8月に稼働して生産能力を引き上げ、人員獲得も進めているところです。
――年間500台の着工台数を600台に増やす計画だ。
守谷 本社工場の生産機能を一部鳥浜に移して焼付塗装工場をこのほど建てました。宇都宮工場(栃木県宇都宮市)も増設します。
当初は新工場を建てる計画でしたが、宇都宮工場の増改築で生産能力が確保できることが判明したため、新建屋の増築や生産設備を導入します。部品製造や塗装の内製化を進めて原価コストを圧縮し、競争力を高めます。
――冷凍冷蔵庫の受注動向は?
守谷 冷凍冷蔵倉庫はエレベーターの設置台数が少なく、垂直搬送機が多いため、現在は受注台数の1割に満たない程度です。一方で普通倉庫は三菱、三井、住友など大手の施工案件に加え、近年は半導体製造工場や不動産ファンドが手がける物流施設からの受注も増えています。
荷物用エレベーターは1台ごとに仕様が異なるオーダーメイドが基本です。大手の乗用メーカーは標準規格で大量生産するため、手間がかかる荷物用には対応しきれない。そのため当社にオーダーが多く寄せられるわけです。
――人手不足はどう対応する?
守谷 社内の配置転換や中途採用を行い、人材育成を進めています。設計部門では理系の学生を積極的に採用しています。昨年は横浜駅に直結の新オフィス「テクニカルセンター」を開設し、通いやすく働きやすい環境を整備しました。約60人が在籍しています。
――DX化も視野に入る?
守谷 DX化は全社的な取組みです。紙やエクセルに蓄積した膨大な情報をデータ化する取組みを始めており、加工や活用法について、データサイエンスの分野に強い滋賀大学と研究を進めています。テクニカルセンターでは、これまで標準化が難しかった設計や部品製造で標準化をさらに広げます。標準化が広がれば省力化と製品の安定供給につながります。