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この人に聞きたい:第921回
(週刊水産タイムス:24/02/19号)

「不易流行」の精神で

横浜冷凍(株) 代表取締役会長  吉川 俊雄氏

 

時代の変化を冷蔵倉庫に集大成

 ――能登半島地震が年初に発災した。物流網が寸断されたことで、ロジスティクスの重要性が改めて認識された。
 吉川 震災は危機意識を高め、教訓を与えてくれる。その教訓をBCP(事業継続計画)対策に生かすことが重要になる。

 ――大阪府の夢洲一帯で2018年、台風21号の影響で大規模停電が発生した。
 吉川 夢洲物流センター(2014年竣工)はリチウムイオン蓄電池を導入していたことで、冷蔵庫棟の照明や携帯電話の充電、テレビやラジオも使えた。情報収集もできて、復旧工事に大いに役立った。

 ――北海道胆振東部地震(2018年)でも大規模な停電が起きた。
 吉川 ブラックアウトを教訓に、当社冷蔵倉庫に自立機能を持たせる必要性を感じた。そこで恵庭スマート物流センター(2024年2月6日竣工)に、当社北海道拠点で初の太陽光発電設備を導入するにあたり、自立機能を持たせた。さらに大阪府に新設した夢洲第二物流センター(2024年2月9日竣工)の太陽光発電設備にも、阪神地区で初となる同様の機能を持たせた。これで停電となっても、太陽光パネルで得たエネルギーを電気に変換し、災害時にも使用できるリチウム蓄電池と併せることでBCP対策の強化を図っている。

 ――震災等の教訓を新設拠点に具体的に反映している。
 吉川 冷蔵倉庫は時代の変化を捉え、その備えや対応を具体的に集大成する構造物であると考えている。今年は年初から災害や火災、事故が相次いだ。今問われていることを冷静に分析し、自社拠点を見直し、構造物やシステムに今後も常に反映していく。

 ――省力化や省人化も今問われている。
 吉川 対策のひとつが移動棚とカーゴナビゲーションシステムの導入となる。これは端末に数字を打ち込むと貨物の場所が表示される仕組みで、若手社員でも短時間で迷わず、正確なオペレーションが行える。当社独自の仕組みとして、既設センターでカーゴナビゲーションシステムの内製化を進めている。新築では今回の夢洲第二物流センターから導入した。この仕組みはベトナムなど海外でも応用できる。

 ――コーポレートロゴを1月からリニューアルした。新しい旗印のもと、北海道の恵庭スマート物流センター、大阪の夢洲第二物流センターと相次いで最新鋭設備の冷蔵倉庫を竣工した。
 吉川 恵庭スマート物流センター、夢洲第二物流センターのいずれも太陽光発電システムやDX(デジタルトランスフォーメーション)対応などの最新設備を導入した。新しい旗印にふさわしい、次世代型の環境配慮型物流センターの拡充を今後も進める。工期の遅れで恵庭スマート物流センターは竣工が遅れたが、本来であれば昨年中に竣工し、夢洲第二物流センターが今年最初に竣工する冷蔵倉庫となる予定だった。
 いずれにしても恵庭スマート物流センター、夢洲第二物流センターともに、昨年75周年を迎えた当社が、次の100周年に向かい新たなスタートを切ることを象徴する特別な思い入れがある拠点となる。
 夢洲第二物流センターの立ち上げにより、低温物流の需要が年々高まる阪神地区の設備をさらに増強し、冷凍食品などの寄託需要に応える。阪神地区ネットワークの保管能力は六甲、西淀、舞洲、北港、夢洲、夢洲第二を合わせて13万t超になる。

 ――夢洲埋め立て地が分譲に出た際、横浜冷凍が最初に分譲の申し込みをしたと聞いている。
 吉川 他の業者が申し込みをしていなかった。結果として一番早かった。

 ――先見の明があるともいえる。
 吉川 新たな土地に着目し、精査し、時代の変化に合わせた冷蔵倉庫を立ち上げるように努めてきた。原動力は何かと問われれば、それは好奇心かもしれない。私は雑学でも構わないから、色々なモノをよく見て、経験し、実感することが重要だと考えている。それは仕事に役立つことがある。冷蔵倉庫の専門業者だからといって、冷蔵倉庫のことだけを知っていてもダメ。寄託者は様々。顧客目線に立つためにも、幅広い事象に興味関心を抱くことが大切だと思う。好奇心が幸いし、他社より先に夢洲に着目した。首都圏の圏央道沿いにも当社が冷蔵倉庫を最初に立ち上げた。進出当初は様々言われたが、今や沢山の業者が圏央道沿いに冷蔵倉庫を立ち上げている。

 ――時代の要請としてSDGsへの貢献がある。
 吉川 夢洲第二物流センターにおいても省エネ設備、環境保全対策を強化した。具体的な対策のひとつに「ソーラーパワーアイスパックシステム」がある。これは建屋全体の電力負荷が太陽光発電設備能力を下回った際に、太陽光発電で得た電力で冷凍機を強制的に運転させ、RC躯体と貨物の蓄冷を行う仕組み。阪神地区で初導入となる。

 ――冷蔵倉庫の外観も、従来の概念にとらわれないヨコレイ新拠点が増えてきた。
 吉川 夢洲第二物流センターの場合、隣接する夢洲物流センターに合わせた外観とした。夢洲の新たな特長は、省力化・省人化、省エネ・環境保全、冷却設備、BCP対策にある。伝統を大切にしつつ、時代に応じて新しいものを常に新拠点で取り入れていく。継承と進化、不易流行が肝心だ。基本的に同じ冷蔵倉庫は作らない方針で、より良い仕組みを新拠点に取り入れようと研究している。

 ――吉川会長が社長当時、日本経済新聞のコラム「交遊抄」に寄稿されたが、そのタイトルが「不易流行」だった。
 吉川 冷蔵倉庫業の要諦は「不易流行」だということを表現した。設計士の俵谷莞三さんの口癖が「同じ冷蔵倉庫を造るのはやめよう」で、座右の銘が「不易流行」。これに感化された。日経の交遊抄に寄稿したのは10年以上前になる。それを現社長の古瀬健児が先日、社内スピーチで「不易流行」を持ち出してきたので驚いたが、その言葉が原点。
 当社の本業が冷蔵倉庫業であることを忘れてはならないが、次世代を担う社員は既成概念にとらわれず、「冷蔵倉庫業をこうすれば、もっとよくなる」と新しいことに意欲的に挑戦してもらいたい。ヨコレイの「継承と進化」「不易流行」の精神を、これからを担う若い力に期待したい。

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