この人に聞きたい:第924回
(週刊水産タイムス:24/03/11号)
昨年の売上げは過去最高水準
ニッスイUSA 社長 兼 ニッスイ 北米事業執行 松本 貴志氏
コストインフレで苦戦
ニッスイの北米事業執行およびニッスイUSA社長を務める松本貴志氏に2023年の北米事業各社の概況と、24年の見通しなどについて聞いた。
――2023年のニッスイグループ北米事業の総括について。
松本 北米トータルでは前年比増収となり、売上げ規模は過去最高レベルとなった。人件費の高騰やコストインフレの継続で厳しい環境の年だった。
――水産加工事業を行うユニシー社の23年の概況と24年Aシーズンの見通しについて。
松本 ユニシー社はスケソウ製品の生産が順調だったが、スリミ・フィレともに厳しいマーケット環境が続く中、コストインフレの継続、労務費のコスト上昇などにより厳しい1年だった。
スケソウダラ漁業のAシーズンは順調に操業している。コストインフレの継続、ワーカー賃金の高止まりの中、操業コストをいかにコントロールするかが課題となっている。
白身フライはさらに拡販/G社のシェアbP守る
――家庭用水産冷凍食品メーカーのゴートンズ(G)社の23年の概況と24年上期の見通しについて。
松本 G社は昨年までに実施してきた値上げの影響で販売数量は減少したが、売上げは増収となった。シェアbPの白身魚フライ製品の販売を伸ばすとともに、エビフライ製品の販売にも力を入れてマーケットシェアアップを実現した。昨年1月に販売開始した「エアフライド」シリーズ2品(白身魚フライ・エビフライ)も売上げ増に貢献した。
24年上期は、販促費を効果的に使い、シェアbPの白身魚フライのさらなる拡販と、エビフライの配荷アップで数量増をめざす。
「エアフライド」シリーズに新商品の「白身魚フライガーリック&ハーブ」を投入し、シリーズ全体の数量増加を図る。
――業務用水産冷食メーカーのキング・アンド・プリンス・シーフード(K&P)社の23年の概況と24年上期の見通しについて。
松本 K&P社はコロナ後の人流回復もあり、大手問屋向け、レストランチェーン向けともに前年比増収となった。主力のエビフライ製品に加えて、白身魚フライ製品の拡販に取り組んだ。スリミ製品(クラビーケーキ・センセーションシリーズなど)も前年比増収となった。
新規開拓に注力/K&P社は米系に拡販
24年上期は大手問屋やレストランチェーン向けに主力のエビフライ製品を拡販するとともに、白身魚フライについては新規顧客を開拓する方針。
人手不足や人件費アップに悩むレストランでは、店内調理から冷凍品調理へのシフトが進むことが予想され、その需要を取り込んでいく。アジアン商材は目新しいメニューアイテムを探している米系の顧客への拡販を進める。
――水産品の買付・輸入販売事業を行うF・W・ブライス社の23年の概況と24年上期の見通しについて。
松本 FWB社は昨年、サーモン類・カニで前年比増収となったが、白身魚カテゴリーはマーケットが価格調整局面となり減収。サーモン類は大手問屋向け、大手量販店向けで伸長。カニはロシア品禁輸後の市場在庫が一掃されてきており、アラスカ産・カナダ産主体の荷動きにシフトしてきた。日本産ホタテの大手量販店向け販売継続を実現した。
24年上期は主力のサーモン・カニ・白身魚カテゴリーを中心に、大手問屋向け、大手量販店向けに拡販をめざす。特にグループ企業のチリS・A・社のトラウト、ユニシー社のカニ・マダラの取り扱いを強化する計画。日本産ホタテのさらなる拡販にも取り組む。
24年見通し 家庭用は堅調 外食はQSRへシフト
――2024年の北米市場での水産物の消費・販売(家庭用・業務用)の見通しなどについて
松本 家庭用は、コロナ禍で獲得した新規顧客層や、Eコマースの売上げ増加の継続で引き続き堅調な消費を見込んでいる。
業務用はカジュアルダイニングからクイック・サービス・レストラン(QSR)へのシフトが継続するため、QSR需要の取り込みがカギになる。
――そのほか、北米市場の動向に影響を及ぼすトピックスについて。
松本 コモディティーの白身魚カテゴリーでは、ロシア産原料(スケソウダラ・マダラなど)の第三国加工品が、米国向けに輸入できなくなることによる、マーケットへの影響を注視している。