この人に聞きたい:第948回
(週刊水産タイムス:24/09/02号)
需要限られても必要な商品出す
日豊食品工業(株) 代表取締役社長 小野 雅充氏
(おの・まさみつ)1998年ニッスイ入社。食品営業を長く担当。商品部課長も経験。2016年中四国支社長から昨年グループ会社の日豊食品工業に転じ、顧問、常務を経て今年6月社長。1964年8月14日東京八王子生。早稲田大社会科学部卒、60歳。
水資源に恵まれた環境活かす
ニッスイグループ。冷食のオムライスを軸に阿蘇山から湧き出る名水を使った製氷事業も手掛ける。小野氏はニッスイから転じ今年社長に就いた。
――猛暑酷暑の時期、製氷がフル回転なのでは?
小野 第2工場で製氷を手掛けていますが、今夏はオーダーが急増し、生産が追いつかない状態。南阿蘇山系の地下130mから汲み上げた水を利用して密度の高い角氷を生産しています。不純物を一切除去した純度の高い氷です。九州では定番の袋入りかき氷各種が人気です。
――儲かってしょうがない?
小野 ところが氷はなかなか高く売れない商品。ペットボトル水500mLは120〜130円ですが、かち割り氷は1s200円、商品によっては100円を切ることもあります。電気料金、人件費、物流費などみな高騰していますが、価格への転嫁は厳しい。
――商品には自信がある。
小野 南阿蘇山系の地下水を汲み上げていますが、本当に水質がいい。大手酒類飲料メーカーの工場や話題の半導体産業があるのも納得です。
――冷食ではオムライスが軸。
小野 当社事業の9割がオムライスです。目立たない商品ですが、ニッスイの営業の頑張りもあり、安定して伸びています。コロナ禍の影響で個食需要が増えたのもプラス。生産ラインを増設したこともあり、8年間で出荷量は1.5倍の3500tに。この分野のシェア3/4を押さえていると分析しています。
――絶対量は大きくないが、食べたい人が必ずいる“スモールマス”商品なんですね。
小野 原料卵の調達、価格高で数年苦労しましたが、調達先拡大や生産性向上など、ニッスイと協力しながら対策を講じています。
――幼児食向け冷食「ニコパク」の生産工場と知って驚いた。
小野 1歳6カ月以降の幼児向け、育児を助ける食としてニッスイが力を入れています。当社は全6品中、炒飯、親子丼、麻婆丼、オムライス、カレードリアの5品を生産しています。配荷を段階的に増やしていますが、これもスモールマス、必要とする人は必ずいるはずです。
――会社経営上の課題は。
小野 人材育成です。50歳以上が社員の半数を占める中、20%程度の20〜30代社員を引き上げることが大事。次世代の管理職を育成し強化しないと。幸い当社は人材確保に比較的恵まれている。今後はAIなど最新技術も取り入れながら経営改善を進めます。