この人に聞きたい:第969回
(週刊冷食タイムス:25/02/11号)
歩みを止めずにチャレンジ
味の素冷凍食品(株) 代表取締役社長 寺本 博之氏
(てらもと・ひろゆき)1989年(平成元年)味の素入社。家庭用営業、マーケッター等を経て、インドネシア味の素に6年、ベトナム4年(取締役)を含め、33年の社歴で海外が16年と約半分を占める。本社海外食品部では黒崎正吉前味の素冷食社長の部下、のち同部長。19年執行役員東京支社長から21年執行理事支社長。黒崎氏の後任を務めるのは今回が2回目。1965年7月15日生まれ、関西大学社会学部卒、59歳。
ポイントは「味の素グループならでは」
味の素冷凍食品の寺本博之社長は春の新製品発売に当たり、「味の素グループならではをポイントに、歩みを止めずにチャレンジする」など、次のようにコメントした。
◇ ◇
2025年は創業25周年を迎える節目の年になる。どの企業も節目は意識しており、これまでの歴史や実績に対して敬意を払いながら、これだけ混沌とした読めない時代を乗り切るためには、変革が必要と考えている。変えていかなければ、生き残れないと各社も身に染みていると思うが、当社もまったく同じ。
その危機感に対し、味の素グループは2030年のありたい姿を示す指標「2030ロードマップ」という大きな志を持っている。当社の場合は“第二の創業期”という言葉に換え、この2年ぐらい、さまざまなチャレンジをしている。残念ながらチャレンジしてすぐに数字となって表れるほど甘いものではないとわかっているが、歩みを止めずに取り組んでいる。
今春の新製品のポイントはいつも伝えているが、「味の素グループならでは」。それは我々が掲げている「おいしさbP」、「楽しさ」、「健康・栄養」、「環境に配慮」という4つの独自価値で突き抜けた、唯一無二の存在になること。どの新製品も何かしら4つの独自価値を大事にしている。
技術力をベースに新しい価値を提案
常にベースにあるのは味の素グループの技術力。我々は派手なことはなかなかやらないが、グループの技術をベースにしながら、世の中に新しい価値を提供したい。
2020年、もともと川崎市にあった味の素社の研究所と当社、味の素AGFの研究所を統合した。最初はどうやって仕事をしようか戸惑いもあったと思うが、最近は慣れてきた。3社の技術交流が我々のイノベーションにつながり、成果となって表れている。成果を数字に変えるのがこれから大事な仕事になる。
一方で、当社は営業部と呼んでいた組織名をカスタマーソリューション部に改称した。当社が顧客に対してどうありたいか、存在意義を組織名に込めた。すでにフードサービス分野ではカスタマーソリューションという言葉に恥じない仕事の進め方が組織内に定着してきた。
家庭用については、我々は“規定演技”と呼んでいる。ある決められたことを全国で、皆でしっかりやり抜くというのがこれまでの仕事だった。規定演技から、いかに想像力を働かせ、カスタマイズした提案ができるか、道半ばではあるが組織名に恥じないように進化させたい。
餃子の焼き体験イベント各地で開催
「ギョーザ」が張りついたフライパンを研究し、永久改良につなげる「冷凍餃子フライパンチャンレジ」プロジェクトを通じ、「ギョーザ」の品質をさらに向上させた。今期は品質の高さをしっかり生活者に伝えるため、焼き体験イベントをさまざまな場所で開催し、当社の「ギョーザ」の価値を上げることにかなり集中している。
小売店での販促活動とは距離がある取り組みに見えるが、味の素グループならではというポリシーに則り、「ギョーザ」の価値を上げ、それをしっかりと小売店に届けてもらう、という意味で力を入れたい。
日本発のグローバルブランドへ
我々にとって今春の大きなチャレンジは「AJINOMOTO ギョーザ」へのブランド強化。これまで大きく「ギョーザ」と表記していたパッケージを、「AJINOMOTO ギョーザ」というロゴと製品名をセットにした表記にした。我々にとってはかなり大きな変更になる。日本発のグローバルなブランドにするため、2年あまりの間、虎視眈々と計画していた施策をいよいよ形にした。
海外はアメリカとヨーロッパに法人があり、アセアンには調味料の強力な法人を持っている。これらの強力な法人が新事業として冷凍食品事業に参入する時のグローバルブランドとして広めるための第一歩と捉えている。
「おべんとPON」何年かけても育成
家庭用の弁当商材「おべんとPON」は私自身、弁当商材は将来的にはすべて「おべんとPON」みたいになるのではないかと思っている。物流効率や冷凍庫のスペース、限られた売場を考えると、大きなパッケージが世の中を席巻し続けるとは思えない。他社が我々に追随していただけるまで頑張る。業界全体で盛り上げたい。
「おべんとPON」の発売当時、メディアや流通から高い評価をいただいたのは、目新しさだけではない。価値を認めていただいたからこそ、あれだけ取り上げてもらったのだと思う。まだ及第点がもらえる店頭回転には至っていないが、売場から消えないように、何年かけても育てる。
今年は第二の創業期と呼ぶにふさわしい、業績が伴った1年にしたい。