この人に聞きたい:第972回
(週刊水産タイムス:25/03/03号)
ニッスイの北米事業
ニッスイUSA社長 兼 ニッスイ北米事業執行 松本 貴志氏
G社はエビフライ拡販 K&P社はアジアン冷食を強化 ユニシー社はフィレ増産 適正配置で効率高める
ニッスイの北米事業統括兼ニッスイUSA社長を務める松本貴志氏に2024年(1〜12月)の北米事業各社の総括と、25年上期の見通しなどについて話を聞いた。
――昨年の北米事業全体の概況について。
松本社長 北米全体では前年比若干の増収を確保した。インフレ継続による食シーンの変化、人手不足、人件費高騰、地政学的リスクへの対応などもあり難しい1年だったが、増収を確保できた。
――スケソウダラなどの加工を行うユニシー社の昨年の概況について。
松本 水産加工を行うユニシー社はマダラの扱いを増やして増収だった。スケソウダラの操業は順調だったが、スリミ・フィレとも厳しいマーケット環境が続き苦戦した。
――家庭用水産冷凍食品メーカーのゴートンズ(G)社の昨年の概況について。
松本 G社は非常に良い状況だった。米国のリテール向けは増収で数量も増えた。単価の高いエビ製品は苦戦したが、市場シェアbPの白身フライの販売をさらに伸ばすことができた。販売チャネル別で見ると、会員制スーパーで販売している大容量パックが良く売れた。インフレの影響で消費者の生活防衛意識が高いため、ボリュームパックが人気だ。また、スーパーなどが展開するEC向けの販売も好調だった。
――業務用水産冷食メーカーのキング・アンド・プリンス・シーフード(K&P)社の昨年の概況について。
松本 主力のエビフライの販売が大手問屋向けに伸びて計画比で増収。スリミ製品(クラビーケーキ)が伸びて増収。レストランチェーン向けは比較的単価の安いチキンが販促に採用される傾向にあり、単価の高い水産品は苦戦した。
――水産品の買付・輸入販売事業を行うF・W・ブライス社の昨年の概況について。
松本 主力のサーモンやカニは増収。白身魚は価格の調整局面で減収となったが、販売数量は伸びた。ユニシー社が増産したマダラ製品をうまく販売した。
サーモン系は大きく伸びた。大手問屋、量販店向けとしてチリSA社のトラウトや、チリ産アトランが中心。
カニの販売も好調だった。タラバガニを中心に大手量販店との取り組みが増えた。
――ユニシー社の2025年上期の見通しと重点課題は。
松本 ユニシー社はフィレを増産して、日々のコスト管理を徹底する。マダラの生産を強化し、グループの販売網を活用して積極的に販売していく。Aシーズンはスケソウダラ、マダラ、カニと忙しいため、適正な人員配置により生産効率を高めている。
――G社の25年上期の見通しと重点課題。
松本 G社はインディアナ州に新工場を建設中で計画通りの進ちょく。25年下期の稼働をめざしている。リテール向けの白身魚フライを増産して販売を強化する。将来的にはアイテムを増やす方針。生産効率を追求した工場となる予定。
工場を建設している中西部のインディアナ州は優秀な従業員が確保しやすく、全米向けに配送するには物流拠点として立地が良い。
今期G社はエビフライ製品をさらに拡販する。1月に新商品の「ココナッツシュリンプ」「ダブルクランチシュリンプ」の2品を投入した。市場シェアは少しずつ伸びているが、まだ伸びる余地がある。G社が長年かけて構築した強いブランド力を生かしながらエビ製品の販売を増やしていく。
グループ商材増やしてシナジー発揮
――K&P社の上期の見通しと重点課題は。
松本 K&P社はレストランチェーンの人手不足・人件費高騰などを背景に冷凍調理品へシフトする動きがあるため、そのニーズをしっかりと捉えていく。顧客の商品開発と一緒に課題解決できる特注商品の開発を行いながら、販売を伸ばしていく。
アジアン商材の販売も拡大する方針。日本やアジアで製造したシューマイなどの冷凍食品の販売を増やす。今年中には、一部現地生産を開始したい。
アジアン商材を米系レストラン・問屋に拡販していくのが同社の使命でもある。
――F・W・ブライス社の25年上期の見通しは。
松本 F・W・ブライス社は主力のサーモン・カニ・白身魚をさらに拡販する。チリSA社のトラウト、ユニシー社のカニ・マダラなどグループ商材の扱いを増やし、シナジーをより発揮していく。