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この人に聞きたい:第994回
(週刊冷食タイムス:25/08/19号)

業務用有力卸に新風呼ぶ

ウルノ商事(株) 代表取締役社長  宇留野 裕太氏

(うるの・ゆうた)2016年ウルノ商事入社。総務課長、執行役員北関東支店長、常務を経て22年から現職。宇留野正義会長の女婿。少林寺拳法2段。1984年4月東京生まれ、41歳。東海大学工学部中退。

持ち前の身軽さで社内改革

 学校給食が主力の業務用卸、ウルノ商事(茨城県水戸市)の社長に就任して3年。この間、持ち前の身軽さで大胆な社内改革を次々に実行してきた。会社の雰囲気が変わり、職場は活気づいている。型にはまらない異色のリーダーが描く会社の未来像とは?

 ――学校は今夏休みだが、この間の対応は?
 宇留野 当社は保育園を含めれば学校給食が売上げの4割を占めます。8月は閑散期で配達もないので時間に余裕がある。そこで毎年、仕入先メーカーに協力いただいて食品工場を視察研修しています。最近ではニチレイ様やヤヨイサンフーズ様の工場を見学しました。1年間で4〜5工場にうかがいます。

 ――学校給食のエリアは?
 宇留野 茨城県内はほぼ全市町村の学校に届けており、千葉県、埼玉県でも少しずつエリアを広げています。

 ――最近は地産地消が推奨される?
 宇留野 当社も以前は県産のほうれん草を使った餃子や米粉のカレーなどを手がけていましたが、今はほとんど扱っていません。原料調達に手間がかかるのと、県産の食材を何%使っているのか、その構成比が高くないと採用されないという基準があるためです。
  肉や魚、野菜と違って、加工品はどうしても構成比は低くなります。たとえばほうれん草の割合を増やすと餃子のあんの緑色が濃くなってしまい、子どもたちは食べない。したがって2%程度に抑えざるを得ないわけです。
 ただ、当社の役割を考えた時、地産品を持っていないのはいかがなものかという思いはあります。やはりトライし続けることが大切と考え、商品部で検討を重ねています。

 ――前3月期の業績は?
 宇留野 売上高が初めて80億円を超えました。営業利益も過去最高益です。老健・メディカルと学校給食が堅調に推移し、特に学校給食は千葉で営業エリアを広げたことで販路が増えました。中期経営計画(22〜26年度)の売上げ目標は前倒しで達成しており、(定性目標の)働き方改革についても業務管理の在り方を見直したり、デジタルツールを導入したりして順調に進めています。

 ――具体的には?
 宇留野 コロナの時、仕事量が減り社員の帰宅時間が早くなったのですが、コロナが明けて仕事量が戻っても帰る時間は変わらず、皆早く帰宅できたのです。つまりムダな作業が多かった。今なら勤怠管理を変えられると思い、自分のやるべき仕事が終わったら何時だろうが帰っていいというフレックスタイム制(コアタイム・みなし残業あり)を導入しました。営業社員たちには「会社は皆さんに時給を払っているのではなく、成果に対して報酬を払っている。短い時間で効率的に仕事ができればそれは才能」ということを2年くらいかけて伝えました。早く帰れるように会議も減らしました。

 ――効果は表れた?
 宇留野 それまで平均で1人当たり月に約60時間あった残業時間が約30時間に減りました。働く時間は減りましたが売上げ、利益ともに伸びており、労働分配率も適正に下げることができています。さらに新卒が辞めなくなったのも大きな成果です。

 ――デジタル化の取り組みとは?
 宇留野 受発注のオンライン化を進めています。今年はAIを活用した入札事務の自動化にも挑戦する計画です。事務処理の多くをAIに任せて最終確認を人の目で行うことで、ミスを減らせると考えています。
 営業管理ではクラウドサービスを使って自社専用のアプリを制作しました。営業先の情報を部員で共有し、委託先が切り替わる時期などを想定してリマインダー設定しておけば抜け落ちることがありません。

 ――自社展示会の模様替えなど改革を次々に打ち出している。
 宇留野 展示会は集客力の強さを仕入先に広くアピールすることが当初のねらいでしたが、その目的は果たしました。最近は販売先もメーカーも勉強に意欲的な人が増えています。そこで業態別にして規模を縮小し、じっくり見て回れるようにしました。全拠点で年間20回ほど実施していますが「悩みを相談できる」「深い話ができる」など好評をいただいています。

 ――社内に新風を吹かせたことで波風は立たなかった?
 宇留野 社長に就任するまでに落ち着きました。会議で意見しても理解されないが何度もありましたが、変えたほうがいいと思うことは言い続けてきました。そうできたのも将来は会社を率いるという覚悟があったからです。

 ――会社の将来像をどう描いている?
 宇留野 業務用卸にとどまらず、2本目、3本目の事業軸を育てる必要があると考えています。構想段階ですが飲食店経営も候補の1つです。子ども食堂を隣接すれば昼だけでなく、夜も食事を提供できる。身の回りには様々な課題があります。食の仕事に携わる企業として、利益はきちんと出しながら間接的にでも社会貢献していく。そういう会社をめざしたい。

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