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業界交差点

この人に聞きたい:第998回
(週刊冷食タイムス:25/09/16号)

直面する課題は組織を挙げて解決

(一社)日本冷凍食品協会  藤江 太郎会長

(ふじえ・たろう)1985年味の素入社。99年味の素労働組合委員長、2011年フィリピン味の素社長、13年味の素執行役員、15年ブラジル味の素社長、17年味の素常務執行役員、20年Chief Transformation Officer、21年4月食品事業本部長、6月執行役専務、22年4月代表執行役社長最高経営責任者、6月取締役(現任)、今年2月から現職。1961年10月25日生まれ、63歳。京都大農学部卒。大阪出身。今年5月、冷食協の第10代会長に就任した。

冷食協藤江会長、冷食新聞協会と懇談/価値を価格に反映させよ 海外に比べて安すぎる

 (一社)日本冷凍食品協会の藤江太郎会長(味の素執行役会長)は冷凍食品新聞協会の加盟各社との懇談会にこのほど出席し、これまでの自身の歩みを振り返るとともに、冷食業界が直面する課題を挙げて「解決に尽力したい」と会長としての任務遂行に強い意欲を示した。
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 まずは自分がどのような人間かを知っていただきたいと思います。生まれは1961年。大阪府高槻市で育ちました。70年の大阪万博が開催されたのは近隣の吹田市。10回以上通いました。会場で冷凍食品を食べる機会があり「かなりおいしいね」と両親と話した覚えがあります。大阪万博を契機に冷凍食品の市場が大きく伸びたと思うと感慨深いです。
 味の素入社は1985年。人事部で学生の採用・研修を担当しました。採用担当と言うと格好よく聞こえるかもしれませんが、当時は電話係を若手が担当しており、学生に「いつ頃来てください」といったことを連絡する1人でした。
 本当は営業をやりたくて入ったのですが、上司と話をする中で「人事部は商品を売らないが、会社全体を(学生らに)売り込んでいく、広めていくという大事な役割がある」と言われ、どうすれば売り込めるのかを自分なりに考えました。やはり母親を味方につけることが最良だろうと。当時、学生は家に帰ってこないものですから母親と長電話をして「本人が就職先に迷っているようでしたら、ぜひ味の素をお願いします」などと話したのを昨日のことのように覚えています。
 その後、神戸営業所で家庭用のドライ製品を担当しました。冷凍食品は担当しませんでしたが、さほど大きな職場ではなかったので、業務用や冷凍食品の担当者らと協力し合うことはありました。

労組専従10年、協調領域を知る

 神戸営業所に5年間在籍した後は味の素労働組合の専従を10年やり、最後の1年間はフード連合(日本食品関連産業労働組合総連合会)に派遣されました。各加盟組合とは競合関係にあるところも多かったのですが、生産性を上げて労働条件を良くしていくことは基本目標ですし、食品安全や取引慣行の見直しなどは共通の課題です。当時は協調領域、非競争領域という言い方はしていませんでしたが、1社だけでは解決できない課題に協働で取り組んでいました。冷食協の加盟メンバーとも侃々諤々(かんかんがくがく)の議論をしました。今回、冷食協の会長にと声をかけられ、非常にやりがいを感じています。

海外で学んだ値上げの波及効果

 労働組合を離れ、2004年からは中国(広州、上海)での仕事に7年間従事しました。その後、フィリピン味の素の社長を4年間務めました。歴史ある会社ですが、当時は赤字転落の危機にあった。そこで会社のありたい姿を作りまして、そこから今何をやるべきかを考え、全員で実践したおかげで、今は非常にいい会社になっています。
 実は失敗談なのですが、フィリピン時代に値上げを多少ためらったことがありました。他社はどんどん値上げをするのに当社は遅れてしまい、業績回復にかなり時間を要しました。反省点でした。
 2015年にブラジル味の素の社長に就きました。赴任して1週間後に「9%の値上げをしたい」と言われてドキリとしましたが、やはり(物価上昇の)最初の波にきちんと乗ることが大事と考え決断しました。値上げの後に賃上げは必ず起き、やがて景気の好循環につながっていく。このことが重要だと考えるのは海外での経験があるからだと思います。

ゴルフ解禁は来年春の予定

 日本に戻ってきてからは常務執行役員として働き方改革、DX推進・グループ調達を担当し、執行役専務・食品事業本部長を経て22年に取締役・代表執行役社長に就きました。昨年12月に病気を発症しました。今後のことを考え、後進に道を譲ることを決めました。
 当社は指名委員会等設置会社で非常時のサクセッションプラン(後継者計画)を事前に作成しています。この中で後継者の筆頭に位置付けていたのが中村茂雄(取締役代表執行役社長最高経営責任者)。今年2月にタスキを渡しました。
 現在は執行役会長として対外活動に取り組みながら、日本冷凍食品協会会長、食品産業中央協議会会長、日本輸入食品安全推進協会会長として業界の健全な発展に努めているところです。
 趣味はゴルフです。まだ解禁にはなっていませんが、来年の春頃には再開したいと思っています。温泉にも行きます。特に秘湯が大好き。料理も好きで毎月教室に通っています。いかの塩辛やいくら、野菜の煮物、だし巻き玉子などを作っています。
 冷食協会長として重要と考え、貢献していきたいことを3つ挙げます。
 1つは「何が起こるかわからないことだけがわかっている時代」の協会の役割。企業は社会や業界、お客様の生活様式の変化に早く気づき、一歩または半歩先で手を打つことが求められています。冷食協がそのための情報提供や環境整備に努めます。
 2つ目は賃上げから値上げにつなげ、利益の好循環を実現すること。冷食協としても実現に貢献していきたいと思います。日本の冷凍食品は品質が優れているのに、海外に比べて価格が低すぎる。価格が低いと社員の給与、外注業者への委託費などを上げることができない。景気の好循環が生まれない。やはり価値を価格にしっかり反映させることが大切です。
 その前提条件として各社がコストダウンにこれまで以上に取り組む必要があります。さらに「松竹梅の価格戦術」が肝心です。市場を見渡すと梅が多いように見えます。松の戦略をどう立てるかが非常に重要です。
 3つ目は協調領域です。ここでの取り組みを深めていきたい。特に@環境問題A物流問題B食品表示C協会運営の4つが主要領域と捉えています。物流問題などすでに数社で検討を始めている取り組みをしっかりと深めながら、次のステージに移行させることが私の役割と考えています。冷食業界には協調領域が多くあります。協調領域の取り組みを広げることで付加価値の源泉を多く生み出せる。私も微力ながら尽力します。

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