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●近畿大学 世界初・ノドグロ完全養殖に成功  後藤美緒 (週刊水産タイムス:26/02/09号)

今後3年で成魚に/養殖技術の開発と高成長化が課題

 近畿大学水産研究所(和歌山県白浜町、家戸敬太郎所長)は富山実験場(富山県射水市)で、世界初となるノドグロ(アカムツ)の完全養殖に成功したことを5日発表した。今後、飼育技術全般の開発と安定化を図るとともに、品種改良による高成長化をめざす。

完全養殖ノドグロ稚魚の水槽を手にする
家戸所長(右)と富山実験場の中村尚隆技術職員
完全養殖によるノドグロの稚魚
(生後106日目))=近畿大学提供
 今回の研究は、2015年にアーマリン近大(竹中勇人社長)より奨学寄附金を受けてスタート。16年に富山県入善町で漁獲されたノドグロからの採卵と人工授精、人工ふ化に成功したが、量産には至らなかった。
 その後、新潟県立海洋高校と上越漁協の協力により安定して良質な卵を確保することが可能となり、完全養殖を目標に人工ふ化魚の量産化に取り組んだ。
 ノドグロは卵から稚魚まで育てることが非常に難しく全滅を繰り返したが、酸素濃度を調整することで、22年に約1万尾、23年には3万尾以上の種苗生産に成功。能登半島地震による施設の被災を乗り越え、22年に人工ふ化して3歳魚に育ったノドグロを親魚として、昨年8月から自然成熟とホルモン投与による催熟で採卵を試みた。
 自然成熟群は、自然界の採卵時期に合わせて水温管理するなどの工夫を行い産卵を確認できたものの、受精には至らなかった。
 一方、催熟群はホルモン投与によって産卵を促したメス6尾から計8回、約36万個を採卵。人工授精を行った結果、10月6日に人工ふ化に成功し、ノドグロの完全養殖を達成した。
 現在、完全養殖ノドグロの稚魚7000尾の飼育を継続している。今後3年程度で成魚となり、次の完全養殖ノドグロを産む親魚に成長する見込み。

採算性を高め、5年目処に種苗供給へ

 5日開いた記者説明会で、家戸所長はノドグロの完全養殖について「もっと時間がかかると思っていた。思いのほか早く実現できた」と喜びを語るとともに、完全養殖に至るまでの経緯と今後の課題について説明した。
 これまでにノドグロの養殖に関する研究はほとんど行われておらず、飼育施設や飼育方法、飼料、給餌方法、病気への対策など、基本的な養殖技術全般の開発と安定化が必要となっている。
 現在の技術では、ノドグロはブリやマダイに比べて成長が遅い。家戸所長は「完全養殖の成功により品種改良への道が開けた。飼育方法や餌の改善と同時に遺伝的な改良を行い、高成長化させて採算性の高い養殖魚をめざしたい」と今後の方針を示した。
 卵から育てたノドグロは9割以上がオスになるといった課題もある。ノドグロはオスよりもメスの方が成長が早いことから、全メス化についても検討していく。
 今後5年程度で養殖業者への種苗の供給が始まれば、一般への流通も進む見込み。
 完全養殖に成功した稚魚の親世代である3歳魚を、運営する飲食店「近畿大学水産研究所」のグランフロント大阪店と銀座店で“国内初の養殖ノドグロ”として近日中に提供を開始する。

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