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今週の一本

●法令遵守は健全か 橋本武寿(週刊冷食タイムス:05/06/07号より)

内を向いた論理で仕事をするな

コンプライアンス(法令遵守)が健全に働いているかどうかの分かれ目は、仕事を内向きにしているか、外向きにしているかにある。

JR西日本が多大な犠牲者を出す事故を引き起こしたのは、内向きの仕事をしていたからに他ならない。なぜ内向きに仕事をしていたのか。経営者が絶対的な権力を持っていたからではないか、というのは常識的な一つの見方だと思う。

「オーナーが長く経営者に居座っている会社があるでしょ。あれはね、はっきり言って社会悪だよ。僕も好きなようにやってきたから分かる」と、取材で懇意になった元オーナー経営者が正直に語ってくれた。この方は会社を上場企業に売却。子会社として存続する道を選び、雇われ経営者となった。それは何よりも従業員のためだという。

売却前、オーナー亡き後の会社はどうなるのか、と不安を抱えていた従業員が少なくなかったようだ。同氏いわく「自分が生きている間、会社が何とかなればいいと、オーナー経営者は本音で思っている」。そういうオーナーは実際多いのかもしれない。

絶対的な権力者がいる企業なり国は、傍から観察していると滑稽に映る。当事者達は、そういう滑稽さを中々感知できないだけに始末が悪い。

臣下が都合の良い情報しか王様に報告しない国を描いた童話「裸の王様」は、童話ゆえに国が成り立っているが、現実ならいずれ、政策が迷走し国民が反乱を起こすか、他国から攻め滅ぼされてしまうだろう。裸でいることさえ気がつかない王様を生み出したのは、王様の絶対的な権力だったはずだ。真実を告げてはならないというのが、閉鎖的な組織内での「常識」だった。

この常識が常軌を逸するとJR西日本や西武鉄道グループのような事件として顕現する。ダイエーの迷走劇も発端は絶対権力をもっていたオーナーだった。業界の会社の常識は客観的に「常識」だろうか。そう願いたい。


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