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今週の一本

●IWCの大勢逆転 井出  万寿男
(週刊水産タイムス:06/06/26号)

持続的利用派が過半数

モラトリアムから24年目の快挙

 カリブ諸島のセントクリストファー・ネーヴィス(セントキッツ)で16〜20日開かれていた第58回IWC(国際捕鯨委員会)年次総会は、IWCの正常化を求めた「セントキッツ宣言」を採択して幕を閉じた。日本などの持続的利用支持国による宣言の採択は、33対32という1票差とはいえ、1982年の商業捕鯨モラトリアム(一時禁止)以降、反捕鯨国の数の力が大勢を支配してきたIWCの現状に大きな風穴を開ける結果となった。

 今回の会合には加盟国70カ国(新規加盟国は4カ国)のうち67カ国が参加。加盟国数では持続的利用支持国が反捕鯨国を上回ることが明らかとなったが、会合前半は昨年のウルサン会議と同様、分担金支払い問題などで投票権の回復が遅れた国や不参加国があったため、わずかの差で過半数に及ばなかった。

 ただ、3日目以降は出席した持続的利用支持国の全てが投票権を回復。「商業捕鯨モラトリアムはもはや必要ない」との見解を示すとともに、IWCの正常化を求めた「セントキッツ宣言」が賛成多数で採択された。

 一方、鯨類捕獲調査事業をめぐっては、例年提出されてきた「調査捕鯨中止決議」は提出されずに終わった。さらに調査妨害の禁止決議が日本だけでなく、米国・NZ・オランダの共同提案の形となり、コンセンサスで採択された。

 日本が悲願としている沿岸小型捕鯨ミンククジラ150頭の商業捕鯨捕獲枠は、和歌山県太地町からも演説を行うなど強くアピールしたが、採決では1票差で過半数に届かなかった。

 正副議長の選出では日本の森本稔政府代表が副議長に推薦され、コンセンサスで合意された。議長は米国のホガース代表(商務省海洋漁業局長)。

 来年の第59回年次総会は5月4日〜31日(本会議は28日から)、米国のアンカレッジで開催される。08年はチリに決定。09年は日本(横浜)とポルトガル(マディラ島)が誘致に名乗りを上げている。

正常化への期待高まる 中川農水大臣がコメント

 中川昭一農林水産大臣は19日、「セントキッツ宣言」の採択を受けて次のようなコメントを発表した。

1、我が国は「科学的根拠に基づく鯨類資源の持続的利用」「文化・伝統の相互尊重」という基本認識に基づき、商業捕鯨の再開を目指している。しかし、1982年の商業捕鯨モラトリアムの採択以来、IWCは長年にわたって「鯨の保護を図りながら持続的な鯨の利用を図る」という条約の目的が遂行できない状況が続いてきた。

2、今回、IWC総会3日目(18日)に、IWCの正常化を求める「セントキッツ・ネービス宣言」が採択された。このことは、持続的捕鯨が可能となる管理措置を採択することによってのみIWCを崩壊から守ることができるとの認識が深まり、ついに鯨類資源管理機関として正常化することを希望する声が反捕鯨国側のそれを上回ることとなった結果であると受け止めている。

3、我が国としては、引き続き鯨類資源管理機関たるIWCの正常化及び科学的根拠に基づく持続的な捕鯨の再開に向けて全力で取り組んでいく。


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