●原料、エネルギー高が業界直撃 佐藤 巳喜夫
(週刊冷食タイムス:06/08/29号)
限界超え値上げ不可避
すんなり通さぬ市場論理に危機感も
コスト高が深刻な段階になってきた。農水畜産原料の高騰に加え、原油高に伴う光熱費等のエネルギーコスト高が重なり、収支の限界点を超えるところまできた。となれば製品値上げは必至だが、市場はすんなりと価格引き上げを認めない。このままでは商品供給に支障がでることは避けられず、強い懸念が出ている。
原料は軒並み高騰している。特に水産原料は、頼りの海外資源が欧米と中国に多く流れ、加工し、製品として輸入しようにも円安でコストがひっ迫している。
すり身、えび類の使用量が多い味の素冷凍食品の進藤大二社長は「原料高だけでなく、原料の供給そのものに不安があり、これに円安という新しい不安材料が加わり、事業戦略上の懸念が深まっている」という。
畜産原料もみな高騰している。米国牛は輸入を再開したが、安いにもかかわらず、流通、末端は品質分析に一段と厳しい目を向けるようになっているため、米国産牛を積極的に原料に使おうとする動きはない。
豪州産牛も円安で高くなり、国産牛も高い。
鶏肉は一時の異常高値から落ちついたものの、高値安定状態。野菜も台風と大雨の影響で国産が高騰し、依存度の高い中国産も同じく台風と大雨で作柄不良、今後の対日輸出野菜が高くなるのは避けられない。
市場最高値を更新し続ける原油価格の影響で、エネルギーコストも下げたものはない。物流費、電力・光熱費の高騰は冷凍食品事業を直撃し、収支が急速に悪化している。重油高によって自家発電を取りやめ、電力会社からの供給に切り換える動きも珍しくない。
メーカーはフリーザーの冷気のモレをなくしたり、電気、水などの無駄な使用を減らすなど細かな工夫を徹底し、生産効率を一段と高めることで対処を図っているが、急激なコスト高をカバーするほどではない。
そこでニチレイフーズはミニハンバーグなど畜肉系市販用主力五品の卸価格を九月から平均8%値上げすることになったが「ほぼ了解を得た」というものの、市場からの抵抗はかなり強かったと見られ、他社も追従しかねている。しかしこのままでは脱落するところが出てきかねない。非常に重要な局面を迎えた。
自家発電リース成り立たず 想定超える原油高
原油高騰でメーカーは諸々のコスト上昇に苦しんでいる。包装資材や輸送費、ボイラーの燃料費等が総じて上昇。中でも原油高騰の影響でコージェネレーションシステムの運営が立ち行かなくなり、対応を迫られるケースも浮上している。
コージェネレーションは工場に自家発電装置を設置し、使用量にあわせて電気や熱を供給する発電形態。「エネルギーコストの最適化」が謳い文句で、原油価格の上昇にかかわらず安定価格でエネルギーを調達できるのが強みだった。
ところが、昨年来の原油高騰は想定外で運営会社の対応力をはるかに上回り、大きな痛手を受けて、ついにコージェネ事業から撤退するケースもでてきた。
これまで運営会社と契約していたメーカーにとっては晴天の霹靂。運営会社が手を退くと、メーカーは電力会社から買電するために配線工事をするか、原油を購入して自らコージェネを運転させるか選択せざるを得ない。
大幅コスト高は必至、苦しい対応を迫られる。

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