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●関東マルハ魚友会での挨拶要旨 井出 万寿男(週刊水産タイムス:07/05/21号)
「魚は高い食材」が前提 五十嵐勇二社長
経済状況は2月末の株価下落、為替動向、金利上昇等から先行きを悲観的に見る向きもあるが、私は安定した状況が継続すると考えている。
主要輸出先である米国/中国が懸念材料はあるものの、この先も安定した経済成長を続けると思われ、生産設備の過剰感がなく、投資が依然衰えていない。2006年度の業績を見ても、増収増益の企業が多く、2007年度も強気の見通しを持っていることがそれを裏付けている。
足元の関東地区については、個人消費/雇用情勢/地価について、はっきりとした改善が見られる。3月に発表された公示価格も、首都圏においては「都心回帰」の影響から住宅地も上昇に転じており、経済環境は他地区に比べると良い状況。豊洲、六本木、丸の内、横浜等に、新しい複合商業施設が誕生していることも、地域経済に好影響をもたらしている。
水産資源は穀物より一足早く、各国間で奪い合う構図が定着してる。マスコミの過剰報道に追従するのは避けたいと思うが、日本に水産物を輸入するという行為自体が益々難しくなっている。その中でも創意工夫を行い、水産物を消費者の皆様に安定して供給するという、マルハグループ及び魚友会の社会的使命は益々大きくなっている。
輸入水産物に関しては、現在の競合状況は改善されることはないと判断している。競合相手である欧米市場は、「魚は高い食材」という前提で、その消費市場が発展している。
「加工」という観点からその違いをご説明すれば、国内外からの安い原料調達を前提に、食材として、食べやすい形に加工度を高めていく形で発展してきたのが、日本の加工であり、現在もその傾向を残している。その為、高い水産物への対応能力は長けており、欧米諸国の価格適応能力は、数量の増加余地と相俟って、大変高いと認識しておくべき。
日本でもポジティブリスト制度が始まったが、品質に対する要求も世界的に高まってきている。漁獲規制の厳格化等により量的な拡大が難しい水産物を、更に、高い品質基準というフィルターにかけ、それを満たした水産物に、世界中の需要が集中するという構図が、今後、益々明白になってくることは想像に難くない。弊社も魚友会の皆様も、日本の水産業界のメインプレーヤとして、この流れに対応する方策を推進していかなくてはならない。
国内で漁獲される鮮魚は、品質的には言うに及ばず、輸入品の値段が上がっていく局面では、大きな魅力がある。弊社としても、鮪・カンパチ・ハマチといった高級魚種の国内生産体制の整備を急ぎ進めている。また、子会社である大洋A&Fにて、遠洋まき網船の追加投入を行う等、グループ国内漁業の強化に取り組んでいる。
一方、国内漁業が復活していくためには、荷受業界が積極的に参画していくことが不可欠。弊社も、同じような観点から、ニチロさんとの経営統合を決断した。水産業界は、まだまだ改善の余地があり、有望であるという確信のもと、是非成し遂げたい。
統合を決定するに到った一つ目は、環境の変化に、スピード感を持って、積極的に関与していくことが必要であると判断したこと。
二つ目は、企業文化が似ているということ。統合により誕生する会社には、背骨となるべき企業文化が必要。
最後の三点目は、当然のことながら、事業収益力が強化されること。海外との競争が激化する中では、調達力を更に強化しなくてはならない。その時に、規模は大きな強みになりえる。
今回の経営統合は、役職員にとっても、良い契機になり、組織が活性化されるという効果が出てきた。今は新しい器ができるという段階ではあるが、役職員の熱意、そこから生まれた様々な創意工夫に、新しい取組みにも果敢に挑戦し、必ず経営統合の効果を出していきたい。
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