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今週の一本

●磁場凍結に根拠なし 木村 健(週刊冷食タイムス:07/10/30号)

学会が実験で検証

品質の差は凍結能力の違い

 磁場をかけた状態で凍結しても食品の品質には何の違いも見られないことが実験により検証された。数年前から電場、磁場を付加した食品凍結装置をマスコミなどが大きく取り上げていたが、これまでその効果に対する科学的検証は十分でなく、原理的な解明もあいまいだったため、学会が実験で検証することにした。磁場を付加した凍結装置の磁場の効果についてはこれまでにも冷凍装置メーカーが「まゆつばだ」としてきたが、学会の実験で検証されたことから、ユーザー側の訴訟に発展する可能性も考えられる。

 (社)日本冷凍空調学会は年次大会のプログラムの1つとして、食品技術分科会で23日、「食品凍結中に磁場が及ぼす効果の実験的検証」を報告した。東京海洋大学の鈴木徹教授が実験方法と結果を発表した。
 この検証ではぶり、まぐろ、大根、さつまいも寒天ゲルを用いて、商業ベースの電磁場食品凍結装置により一般に使われている0.1〜5ガウスの磁場環境の中で凍結実験を行なった。
 その結果、表面温度と中心温度のいずれの食品も、磁場を付加せずに凍結する対照実験とほぼ完全に温度の変化(凍結曲線)が一致した。
 凍結後の食品についても、品質、細胞のダメージ、味などの官能評価で磁場付与のものと対照実験に差異が認められなかった。
 まぐろ、ぶりは200ガウスの状態でも実験したが、同じ結果となった。
 磁場凍結装置の中には高品位に凍結できるものもあるが、これはまぐろの凍結に、一般的に使われている二元冷凍の超低温(マイナス60度C)で凍結しているなど、性能差によるもので、磁場の効果ではないと結論している。

 分科会では「我々も磁場などに何らかの効果があると期待して行なった検証であり、実験結果として効果が認められなかったということ」と語り、磁場凍結装置メーカーに異議を突きつけることが目的ではないことを発表会後の記者会見で付け加えた。
 同学会は今後、電場の影響も実証実験をする予定。

 一般に、磁場を付加して凍結する商業ベースの装置は、高品位に凍結できるメカニズムについて「電磁場が作用して氷の結晶の粒が非常に小さくする」、あるいは「磁場等で過冷却状態を維持、一気に凍結することで表面も中心部もほぼ同時に急速凍結するため」と謳っている。いずれも磁場などの力で氷結晶を非常に小さくするか、作らせないという仮説が骨子になっていた。

 今回の実験で凍結曲線には若干の過冷却現象が認められたが、同程度の過冷却は対照実験でも起きており、ごく一般的に起きる現象として説明できる。
 実験室レベルでの1T(=テスラ=1万ガウス)単位の強力な磁場であれば、なんらかの変化がある可能性は否定できないものの、一般の食品凍結では現実的ではない。
 磁場を付加した冷凍機については、これまでにもユーザー側からの訴訟が起きたことがあった。

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