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●海藻からエタノール燃料 水産庁の水産バイオマス事業 辻 雅司(週刊水産タイムス:08/03/31号)
海洋微生物で新発酵法 生産効率アップが今後の課題
日本水産学会・春季大会で報告
水産庁は海藻からエタノールを作る技術開発「水産バイオマス資源技術開発事業」に平成19年度から5カ年で取り組んでいる。初年度で取り組んだ海藻からのエタノール発酵法についての研究は、海藻の乾燥重量の10〜16%をエタノール化できることを明らかにした。同研究成果は28日、静岡市清水区にある東海大学で開催された平成20年度日本水産学会春季大会で研究グループの東京海洋大・浦野直人教授と水産総合研究センター瀬戸内海水研・内田元晴主任研究員らが報告した。
平成19年度から5カ年で海藻からエタノールを作る技術開発事業では、まず、3年間をメドに海藻をエタノール発酵させる海洋微生物の探索を行い、この微生物を使い海藻から効率良くエタノールを発生させる技術を開発するとしている。また、これと合わせ海藻を細かくする技術開発として、機械装置、酵素、化学分解、圧力を使い、海藻からのエタノール発酵がしやすい方法を確立し、5年後をメドに技術開発を行う計画。
陸上バイオマスからの燃料開発ではトウモロコシ、サトウキビ、などの農産物を物を発酵させてエタノールを生産している。これら農産物は、でんぷんやグルコースなど陸上酵母にとってエタノール変換しやすい糖類が多く含まれてるため、比較的簡単に高い効率でエタノールを得ることができる。これに対して海藻の主成分は酸性多糖であるアルギン酸やフコダインでは、既存の陸上酵母により、エタノール発酵の原料として利用できない糖類が多く含まれているため、エタノール収率は低い。
既存発酵法でのエタノール生産は少量
この問題を解決するため、海藻に多く含まれる糖類をエタノール変換できる海洋微生物(酵母や細菌など)を探索することも今回の研究計画の目玉となっている。
今年度の研究として、酒造で使われている一般的な発酵酵母菌(サッカロマイセス セルビシエ)を使いアオサ、アラメ及び淡水のホテイアオサを原料に糖化処理し、エタノール発酵を行ったもので、単位重量あたりエタノールの収量はアオサで乾燥重量の10%、ホテイアオサで同16%が初めて確認された。今回の海藻のエタノール発酵は日本酒の15%から20%に比べ、海藻は0.5%から1%に相当し、エタノール生産効率は依然として低い。
内田基晴主任研究員は「今回は海藻でエタノール発酵が出来るかどうかという入り口の取り組みで、海藻からも発酵が出来ることを数値で示した。今後の研究の進展により、発酵収率を2〜3倍に高めることを当面の目標としている。また、これと合わせて酵母ではなく、海洋細菌を用いた発酵の研究も北海道大学のグループで進められており、陸上にはない、海の新しい発酵技術の開発が期待されている。さらに2年度目となる20年度は、いろいろな海藻を既存の発酵法を用いて実験室規模でエタノール生産を行い、収率をデータベース化するとともに、どのような種類の海藻がエタノール生産に適しているかを明らかにしたい。
3年度目は、それをさらに進め、エネルギー生産効率、経済効率等の観点から中間評価を行い、技術的なメドがつけば、その後4〜5年度目に試験装置の開発を行うこともありうる」としている。
その他、水産バイオマスからのメタンガス生産技術では、加工残滓などの魚腸骨を原料にメタンガスを発生させる技術は既に開発され、試験事業において海藻を使った実験も行われ、海藻からもメタンガスの発生は確認されている。
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