![]() |
![]() |
●TSSS2025 持続可能な水産業へ、大阪から発信 後藤美緒 (週刊水産タイムス:25/10/06号)藤田水産庁長官「資源管理の調査体制を拡充」/水産業の人権侵害、実情を訴える 持続可能な水産業の実現をめざして国内外のキーパーソンらが最新情報を共有する「サステナブルシーフード・サミット(TSSS)2025」が大阪市のグランキューブ大阪で1〜2日開催された。主催はシーフードレガシー(東京都港区、花岡和佳男社長)と日経ESG(発行・日経BP)。事前来場登録者数は600人以上となった。
昨年のTSSSでは2030年目標として「サステナブルシーフードを日本の水産流通の主流に」を掲げた。花岡社長は「2030年には消費者がどの水産物を選んでもサステナブルなものであると安心して購入でき、そういった需要があるからこそ生産者も潤う状態をつくっていきたい」と展望した。 水産庁の藤田仁司長官が「漁業強靭化計画」について講演した。同計画は漁業を活気ある産業とし、将来にわたって社会的・経済的な役割を持続的に発揮するために直ちに取り組むべきことを自民党が取りまとめ、今年5月に政府に提言したもの。 藤田長官は柱の一つである「環境変化に適応するための大胆な変革の推進」について言及。「TACと実際の漁獲量との間に大きな差が生じるケースがあり、資源管理そのものに対する信頼が失われてしまう。調査体制を拡充するための予算を要求している」として、大手水産会社のまき網漁船による魚探データの提供や、漁業者から提供してもらうべきデータの明確化に取り組んでいくことを説明した。漁業者データの活用を拡大し、より精度の高い資源評価にしていく。 また、「漁獲される魚や漁獲される時期が変わってきていることから、既存の漁業規制を変える必要がある。関係漁業者や地方公共団体へアンケートを行い、見直しの内容を整理している」と報告し、新たな操業に向けた規制の総点検について説明した。 イカ釣り漁業における水中集魚灯使用の検証や、200t未満の規制があるサンマ漁船の大型化に向けた課題整理などに着手している。 そのほか、海洋環境の変化に対応するための新たな操業の構築・推進(サンマ・アカイカ兼業の実証など)、IUU漁業を阻止するための取り組みの強化(水産物流通適正化法のヨシキリザメ、アオザメなどの特定第二種水産動植物の指定に向けた検討)について説明した。 藤田長官は「今後、漁業だけでなく養殖業や水産加工業についても強靭化計画を策定し、強い水産業と豊かな浜の実現をめざす」と方向性を示した。 「水産業における人権侵害と企業に求められる対策と責任」と題したパネルセッションでは、台湾を拠点とするインドネシアの出稼ぎ漁民の労働と生活環境改善を求める組織「フォーラム・シラトラミ・ペラウト・インドネシア(FOSPI)」のアフメッド・ムドザキル氏が、現場の実情を伝えるために登壇した。 台湾のマグロ漁船に乗船しているインドネシア出身の移住労働者が人権侵害に合い、多くの人が命を落としているという。船上ではWi―Fiも使えず孤立した状態で、何か問題が起きても逃げられず、外部に連絡することもできない。 モデレーターを務めたヒューマンライツ・ナウの小川隆太郎事務局長は「水産物を調達する企業の取り組みだけでは解決できない問題。国や国際機関を動かしていく必要がある」と指摘した。 |
||||
![]() |